私が恋をしたのは……【3】 (ページ25)

今日:19 hit、昨日:2 hit、合計:27,756 hit

・ページ25

・

タイガがそっと手渡してくれた優しさが
次から次へとまるで本のページを捲るように
思い出される。

_____

「どんな場所に立たされていたとしても
タイガは必ず前をむく。そんなタイガを
私は誇りに思ったんだ」

タイガ「…それは、君の方でしょ」

「え……っ？」

タイガ「この宮廷に来てから君はどんなことがあっても前を向いてきた」

・

タイガ「A、俺が身だしなみに拘るようになったのは自分自身の心を武装するためだ」

タイガ「自分を着飾るとね、
少しだけ自分が良いものになった気になれるんだ
それで弱い自分を覆ってくれる」

タイガ「だから、俺はこうして今夜、君に魔法をかけた。君の弱さや不安を覆えるように」

タイガ「ね、A。大丈夫って言葉は安易だから
好きじゃない。けど、今日だけは誠意を込めて君に
言う。

俺を、見て」

タイガ「君なら大丈夫。
それにもし万が一のことがあったらこの俺が君を
助ける。絶対に…助けるよ」

タイガ「だから、自信を持ちなよ
俺は君がベルとしてこの任務を全うすることを
楽しみにしてるんだから」
_____

……私はタイガの優しさに
たくさん救われてきたから、それ以上の力で
タイガを助けたい

ううん、それだけじゃない。
何をしてもらったからじゃなくて、

"私が"タイガを助けたいんだ……

この腕の中にいる人が哀しいと
自分に哀しいことが降りかかった以上に哀しい。

……その反対に、タイガが嬉しいことがあったら
私まで死ぬほど嬉しくなる

…他の人相手なら、こんなに心は動かされない。
こんな気持ちにならない

その人の些細な言葉や仕草で馬鹿みたいに
一喜一憂してしまう理由なんて、
たった一つしかない。

ああ……そっか……

真っ暗な絶望の中で、私はたった一つの
揺らぐことのない真実をこの手に掴まえる。

私、タイガのこと好きになってた。
いつの間にか、こんなに……

大好きになってたんだ

どうして……気づかないこと、
ばっかりなんだろう……っ

あまりに静寂に満ちた夜の中、
私は大切な人と、気づいたばかりの恋心を
ずっと抱きしめ続ける。

これ以上、ひとつも取りこぼさないように。
だけど_________________________________

・

残酷な運命は、
私たちのすぐ背後まで迫ってきていたんだ………