私が恋をしたのは……【3】 (ページ22)

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タイガ「こんなんじゃ俺は、何にもなれやしない…」

「……タイガ」

タイガ「こんな俺じゃ、この国を好きで守りたいから
王になりたいなんて、絶対に言えない……っ！」

タイガ「言うことさえ、許されない……っ」

……だから、いつかこの国を裏切るかもしれない
なんて言ったの？

この国を心の底から愛していて、
だけどオブジェクトを見捨てることもできなくて

ずっとその狭間に立って苦しんでいた
__誰にも心の内を見せることも出来ずに

ただ、守りたい___
あまりに純粋で綺麗な想いがタイガの胸の
真ん中にあるのに

……ずっと、そばに、いたのに……
何一つ気づけなかった

今だって、こんなに近くにいるのに
……私はタイガに何も出来ずにいる。

どんな本を読んでいたって、こんなにも優しい人の
心を救う方法なんて……どこにも書いてなかった。

絶望にも似た虚無感を前に、
頼りない言葉が唇から滑り落ちていく。

「そんな……こと、ない」

「何にもなれやい、なんて……そんなこと…ないよ」

タイガが私の言葉を全力で否定するように、
視線を伏せたまま首を横に振る

「そんなこと____」

瞬間、手首を掴まれて____

……！

視界が反転し、頭がトンッと冷たい床に触れて
その場に組み敷かれたことに気づく。

タイガ……？

視線を上げたのと、ぽつり……と
私の頬に冷たいものが触れたのは同時だった。

私の頬に触れたものは、目の前の大きな瞳から
こぼれ落ちてきた、涙だった。

タイガ「A、俺は……ずっと、思ってることが……あるんだ……っ……どうして、俺は、俺……
なのかなって」

……っ

タイガ「俺が他の誰かにら……こんなに苦しまずに
済んだんじゃないかなって…思わずにはいられないんだ」

何か言いたいのに、言葉が何も出てこない。

タイガ「俺のことを忌み嫌う人間は大勢いる。
だけど……俺が一番に俺を嫌ってる」

息を呑んだ瞬間、また透明な涙がぽたりと
私の頬に落ちる。

底なしの寂しさには不釣り合いないほどに
こぼれる涙はあまりに綺麗で……、

だから余計に何を言えばいいのか
わからなくなってしまう。

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タイガ「A、本当は本当は……っ
俺は、俺じゃない誰かになりたい……っ」