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タイガ「本当はティーグル家の名誉なんて……
どうだっていいんだ」
「……えっ？」
タイガ「…置き去りにされたあの日、幼心にわかったんだ俺は"いらない"んだなぁって」
「なんだか…この世界に1人きりになった
みたいな気持ちになって…ふと、バルコニーに出たんだ」
「っ、そしたら…一面咲き誇る薔薇と
美しい夕焼けの景色が飛び込んできてさ……」
「その景色が本当に綺麗で、
なんだかぽっかり空いた心の穴を埋めてくれたんだよね」
「薔薇が咲き誇るこの国の景色に、
あの時の俺は……救われたんだ。あの景色があったから俺は生かされた」
「そこからは自分の居場所を探して、
探して、探して……そんな毎日だった」
タイガ「最初は1人きりだったけど……
気づいたら俺の周りには兄弟たちが、いた」
タイガ「皆、お節介だしうるさいし野蛮だけど……
本当は皆、優しいでしょ」
「うん、そうだね」
タイガが何かから自分を守るように、
ぎゅうっと膝を抱える。
タイガ「俺はこの国の景色に、人に、救われた
……それは何一つ嘘じゃない。だから俺はこの国を
守りたい」
タイガ「…本当に、本当に大切な存在だから
この手で守りたいんだ」
タイガ「それなのに……俺は馬鹿みたいに
迷ってばっかりだ……」
まるでこのまま消えてしまうんじゃないかと
思うほどに、夜に響く声は頼りなく震えていて
私は思わずタイガの手を握りしめた。
捕まえたその手は、怖いくらいに冷たくなっていて
私をひどく動揺させる。
……私に、今、何が出来る？
私に、何が______
タイガ「こんなんじゃ俺は、何にもなれやしない…」
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作者名：きょうもち | 作成日時：2020年12月15日 18時
