57 嫌だ、【天音 煉】 ページ11
誰、待て、嫌だ、帰りたくない、!
カタカタと震え始める体、理由は俺にもわからない。
過去の事は、家族の中であったことは燃やしたから。
でも、何故だか体が拒否反応を起こしている。
凄く、怖い。
「ドイツ語と、黒い髪だけが頼りだったんです」
「、っ…」
膝から崩れ落ちた状態で、女を見上げる。
「奥様が、それしか覚えていないと仰ってましたし、
旦那様は口を開いてもくれませんでしたし」
「来る、な」
ぞわぞわ、悪寒が背中を一気に走り抜ける。
力、入んない、なんで。
『“ねぇ、お母さん待ってるわ”』
「っひ、ぃ……ッ」
母さん、なんでここに、
『ドイツ語、覚えててくれていたのね』
「、ぁ…」
『貴方が研究所に戻ってくれないと、天音家にはお金が入ってこないの』
「ぃ、あ、…」
“母さん、なんで、ッ”
“化け物なんて家族じゃないし、私の息子でもないわ”
“ごめんなさい、化け物でごめんなさい、でも、母さんの言うこと聞けるから、ぁ!”
“それなら、研究所に行ってらっしゃい”
“研究、所?”
“それなら、化け物の貴方でも役に立てるわ、私の”
「来るな、ぁあああ!!」
「今更、何しに来た、!」
「お前なんて、大嫌いだ、ぁあ!!」
燃え盛る炎が、俺を取り囲む。
誰にも、邪魔されない場所。
「…っ、こんな、こんな力さえなければ、」
「こんな力さえなければ、俺は“幸せ”だったのに、ぃ……」
炎の轟音が、俺の言葉をかき消す。
全てを焼き尽くす炎は、俺を優しく包み込む。
そのまま俺は、意識を手放した。
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