31話 ページ35
何も変わらない景色なのに。どこも変わっていないのに。
日常は、残酷に豹変する。
黒尾は、月明かりがそっと差し込む廊下を歩いていた。たった、一人で。
今までに、この数日で山ほどの仲間が消えていった。普通にバレーをしていただけなのに。
足に血が付着したせいで、靴下がまとわりついて気持ちが悪い。違和感に、顔を歪める。
……“もしも、研磨が死んだら”
頭に、その一言が浮かび上がった。
もし仮に、研磨が死んだら。俺はどうするだろう。きっと、ヘタレな俺じゃあ助けることなんて到底出来やしない。
意味もなく、ひたすらに廊下を踏みしめていく。無性に暴れ出したくなって、髪の毛を掻きむしった。
歩き回っていると、片付けられない死体の山がある体育館の前に来た。
不自然にも明かりがついていて、もしかしたら戻ってきたのかもしれない。生き返らせてくれたのかもしれない。
そう思って、慌てて駆け寄る。
重たい扉に手をかけた時。
治「お前も、俺も、なんもしとらん」
中から、稲荷崎の片割れの声がした。きっと、もう一人に言ったのだろう。
けれど。だけれど。
自分に、嫌なほど響いた。
そうだ。俺はなにもしていない。
涙が溢れてきた。頬を伝い、唇の隙間に入り込む。塩辛かった。
頬を伝う涙がやはりどうも気持ち悪くて、来ていたティーシャツで荒く拭う。
ふと足を見ると、夏だからだろうか。蚊に足を噛まれていた。腫れている。
それにすら苛立って、しゃがみこんで思いっきり叩いた。
綺麗な顔を、くしゃくしゃに歪めた双子が目に入る。見ていられなくて、黒尾は来た道を小走りに戻る。
自分の部屋のドアを開ける。電気は付いていなかった。
二段ベッドを見ると、同室の研磨はもう寝ていた。
研磨の側に腰掛けて、サラサラとした髪の毛をゆっくり撫でる。
それでも研磨は身動き一つせず、規則的な寝息を立てていた。よほど疲れていたのだろうか、どこかやつれたようにも見える。
黒尾「…研磨、生きて帰ろう」
黒尾「なぁ、また一緒に遊ぼうぜ」
シューズを脱げば、血が少しだけ染み渡った靴下。そして、この数日で異常なほど走ったり歩いたりしたせいか靴擦れが出来かけていた。
研磨のために持ってきた絆創膏で固定して、自分のベッドに寝転がる。
起きたら、戻ってればいいのに。
願わくば、起きたら自分のベッドがいい。
枕に顔を埋めながら、黒尾は涙を流した。
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キース(プロフ) - 平和ボケマンボウさん» 返信遅くなってすみません…作品の参加、ありがとうございました！魅力があるなんてなんと嬉しい……感謝しています、ありがとうございました！ (2021年10月25日 17時) (
レス) @page42 id: f19164db3a (このIDを非表示/違反報告)
平和ボケマンボウ(プロフ) - 作品拝見させて頂きました。読み進むうちにどんどん物語に惹き込まれていくような魅力を感じました！今回はイベントに参加して頂き誠に有難う御座いました。 (2021年10月19日 22時) (レス) @page7 id: 987adadeae (このIDを非表示/違反報告)
キース(プロフ) - プリン頭さん» コメント嬉しい限りです！書いてるこっちも推しを死なせてしまうのは悲しくて…wこれからも更新頑張りますので宜しくお願いします！ (2021年10月18日 11時) (レス) id: f19164db3a (このIDを非表示/違反報告)
プリン頭 - 更新くそ楽しみにしてます！研磨のいうアイツが誰かめっちゃ気になるのと、このままもう誰も死なないでくれという思いがぶつかってますｗ (2021年10月18日 10時) (レス) @page41 id: 867df5c599 (このIDを非表示/違反報告)
キース(プロフ) - 実花さん» 二度もコメント、めっちゃ嬉しいです！研磨の言うアイツとは…！？(笑)これからも宜しくお願いします！ (2021年10月17日 22時) (レス) id: f19164db3a (このIDを非表示/違反報告)
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