ペパーミントブルーソルベ

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夏休みの間中、先生は週に２度ほど我が家を訪れた。

ひたすら瑠宇と遊び尽くし、夕食もきちんと食べて帰る。

庭にビニールプールを出して２人で派手に遊んでるのに、家の前を通り過ぎていく近所の人達が、何故か微笑ましい視線を２人に向けているのが不思議でならなかった。

何でだ？

こんなに大っぴらに担任教師が１人の生徒をえこひいきしてるっていうのに。

だけどその理由はすぐにわかることになる。








仕事帰りに立ち寄ったスーパーで、例のおしゃべりおばあちゃんにうっかり捕まってしまった。

「聞いたよ、Aちゃん
お姉さん、重い病気で入院してるから、あの子を預かってるんだって？」

…重い病気？

何の話？

「いつもAちゃんの家に、あの子供の担任の先生が来てるでしょ？
この間、公園で見かけて声かけたら、こっそり教えてくれたのよ
地域の人も、Aちゃん達の家族を見守って協力してほしいって」

いやいやいや。

何でそんな大嘘ついちゃうかな。

「とにかく、困ったことがあったら何でも言ってね」

おばあちゃんは暑苦しいくらいの同情の眼差しを向けては、私の肩を優しく叩いて立ち去って行った。









そのまま家に帰ったら、今日も先生が来ているらしく、

家の前を通りかかっただけで、２人の笑い声が聞こえてくる。

家が明るくにぎやかなのはいいことだ。

だけど…、嘘はいかん、嘘は。

玄関に入ってすぐ、先生を玄関先に呼び寄せた。

「さっき近所のおばあさんに聞いたんだけど、先生、何か言った？」

先生はバツ悪そうな顔をして、

「言った」

と、意外に素直に白状してきた。

「公園で瑠宇と遊んでたら、おばあさんが来てあれこれ聞いてくるから
瑠宇に聞こえないように、こっそり話しといた」

「何で病気なんて嘘つくわけ？」

「その方が同情されて、誰も詮索してこないって」

「誰かにアドバイスされたんだ？」

「長谷川先生に」

出た。

また長谷川先生？

どんだけ好きなんだよ、長谷川先生のこと。









「二階堂先生は長谷川先生の言うことなら、何でも聞いちゃうんだね」

軽く嫌味を吐いては、キッチンで夕食の準備をはじめるけど、

モヤモヤが止まらなくなる。

先生がついた嘘は、私達家族を守る為だっていうのは、よくわかってる。

だけどそれが長谷川先生のアドバイスだってことが、なんだか納得がいかないっていうか…。

というわけで、モヤモヤとイライラが止まんないんだけど。

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