ペパーミントブルーソルベ

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「失礼ですが、あなた一人で育てているってことですか？」

先生の視線は相変わらず厳しくて、私はますます萎縮してしまう。

「妹がいます」

「幾つ？」

「高校生です」

…って、だからため息で返事しないで欲しい。

「お若いみたいですけど、叔母さんはお幾つですか？」

「２０歳です」

ほらまた、呆れたようなため息。








「ねえ、大丈夫なの？それ」

急にタメ口になった先生は、机越しに身を乗り出してきた。

「仕事は？」

「保育士をしてます
まだ１年目ですけど」

「保育士ならまだ、育児の知識はあるか…」

独り言みたいに呟いては、また睨むような視線を送ってくる。

「保護者や住所が変わる時は、早めに連絡くれないと」

「すいませんでした
いろいろバタバタしてて、後回しになってました」

もう、怒られてる気満載なんだけど。







「児童相談所に連絡しとく？」

「何でですか！？」

「厳しいんじゃない？
20歳と高校生の女子で、小学校１年生の男の子を育てるって」

「大丈夫です
ちゃんとやってます」

「今、瑠宇は？」

「一緒にここまで来て、今は校庭で待ってもらってます」

そう言ったら先生は席を立って、窓から校庭を覗き込んだ。

…って、待って。

雪駄！？

雪駄履いてんの！？

アリなの？それ。

学校でアリなの？







私の視線が雪駄に集中していたのに気付いた先生は、バツが悪そうに席に戻った。

「瑠宇、めっちゃいい子なんですよ」

褒めてくれてるのに、何故か不満顔で先生は告げる。

「いい子過ぎて心配っていうか…
まだ６歳なのに聞き訳が良すぎるっていうか」

先生の言いたいことはよくわかる。

本当に瑠宇はいい子なんだ。

我儘ひとつ言わないし、言いつけはきちんと守るし、反抗しないし、甘え方もきちんとわきまえていて、本当に愛らしい。

「良く言えば手がかからなくて、悪く言えば子供らしくない、みたいな
友達に意地悪されても平然としてるし、告げ口もしてこない
なんか…、世の中の全てに絶望してるような感じで」

ただの体育系教師だと思ってたけど、この先生は意外にいい先生なのかもしれない。

ちゃんと瑠宇のことを見てくれてるみたいだ。

「とにかく、瑠宇のこと、ちゃんと見てやってください」

先生が深々と頭を下げるから、私もつられて頭を下げた。

「それから、近々、家庭訪問に伺いたいんですけど」

家庭訪問！？

あれって、春にやるもんなんじゃないの！？

今、もう夏休み前だよ？

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