34 ページ34
翌朝、彼のマンションを出て自転車で走る朝の街は、いつもと違う景色に見えた。
私、朝帰りしてきたんだけど！
しかも北山宏光の部屋から。
…まあ、相変わらず何もしてないんだけど。
こんな僅かな背徳感と優越感を含んだ朝を迎えたのは、生まれて初めてだ。
普段と変わらぬ様子を携えて研究室に入ったのに、そんな私の微量な変化も霞さんには気付かれててしまう。
ランチタイムに、
「…なんか進展でもあった？北山くんと」
なんて言いながら、席ごと距離を詰めてきた。
「ないです」
「だって今日、Aちゃんから少しだけ北山くんの匂いがするから」
そう言われて思わず、袖口を嗅いでみるけど、私にはよくわからない。
「…まあ、週末はずっと北山くんの家にいたので」
そう答えただけで、霞さんは大げさに喜び出す。
「やっぱりね
私、こういう勘だけは鋭いんだよね」
だけど霞さんは、そんなお互いの家を泊まり歩いてる私達が、まだ清い関係だなんていう事実には、
全く気付いてないと思われる。
「聞いた？正月の旅行の話」
「聞きました、なんか古民家、だって」
「そうそう、なんか山奥の一軒家らしいよ
そこに２泊予約してるから」
２泊！？
それは聞いてなかったかも！
てっきり、１泊２日だと思い込んでたから。
「Aちゃんと北山くんには、２階の一番奥のいい部屋に泊まってもらおうかと思ってたんだけどね
その古民家の隣にある蔵が洋風にリフォームしてあって、ちょっとした２階建てのコテージみたいになってんの
２人はそこに泊まったらどうかなって」
「蔵がコテージ…」
情報量が多すぎて、まだ頭の中でよく理解できないけど。
なんだか凄い旅行になりそうだってことは、理解できた。
その日の夕方、彼からLINEが届く。
『おつかれ
俺は、今日は深夜まで仕事』
相変わらず用件のみの短文。
だけど今日は珍しくもうひとつ、メッセージが添えられていた。
『当分、仕事が立て込んでるから電話できない
電話で声を聞いたら会いたくなりそうだから、我慢しとく』
…ちょっと待って！
これは、本当にあの北山宏光が言ってる言葉？
会いたくなりそうだから、我慢するって！？
前に彼が、恋愛にパーセンテージ取られるみたいなことを話してたことがあったけど、それは本当なのかもしれない。
仕事に集中したいから無理に恋愛を封印してしまうなんて、やっぱり北山宏光過ぎて私は途方に暮れる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2501人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ジャニーズ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りたわかめ(プロフ) - えりさん» ありがとうございます、多分、3ヶ月ぶりくらいに更新した気がします・・・。夏の間は死んでました(T^T) (2020年9月6日 21時) (
レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - ひろさん» 本日、移行しました！読んで頂けたら嬉しいです(/ω＼*) (2020年9月6日 21時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)
えり(プロフ) - わかめさん、更新ありがとうございました。めちゃくちゃドキドキです。 (2020年9月5日 17時) (レス) id: 8591dd4797 (このIDを非表示/違反報告)
ひろ(プロフ) - 久々の更新楽しみにしてました！！楽しく読ませていただいてます(*´ω｀*) (2020年9月1日 22時) (レス) id: 57f2f46317 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - moraさん» わざわざ聞かせてみましたwwwいこう！ってwwww (2020年9月1日 22時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：りたわかめ
| 作成日時：2020年2月7日 22時
