無敵のスピカ

2 ページ38

あーあ、今夜のAはけっこう飲んでるから、完全無防備状態じゃん。

この状態に乗じて、既成事実を作っちゃってもいいけど、

Aに関しては、きちんと段階を踏みたいくらい大事に思ってるから。

「今日は金曜日だから、俺ん家で飲まない？」

いつものノリでそう誘ってみた。

「いいよ」

少しだけ寂しげにAは答える。

そんなに俺と会えなくなるのが辛いなら、早く言っちゃえよ。

俺のことが好きだって、離れたくないって。

他の女の子と同じように、泣いてすがればいいのに。









部屋まで行く途中、コンビニでバカみたいに買い物をするのもいつものこと。

大概、アルコールやつまみやお菓子なんだけど、今日は特別な夜だから。

Aが大事そうに腕に提げてるカゴの中に、３００円もする高級アイスとモンブランのプリンをそっと入れてやる。

「何これ？」

「だってA好きじゃん、これ」

そう言って、大人っぽく微笑みかければ、Aは切なげに目を伏せる。

どうする？

早く楽になっちゃえば？

確実に今、キュンときただろ。

『二度と会えないなんて嫌だ』って泣いてお願いすればいいのに。

今夜、決着をつけてしまおう。

もし今夜、俺らの関係に何も進展がないようなら、もうこれで終わりにしちゃう？

いや···、進展がなければ進展させちゃえばいい。









Aがこの部屋に来るのは何度目だろう。

もう来すぎて、半分自分の家みたいなもんじゃない？

冷蔵庫を開けて、一緒に買ってきたものを収納したりとかさ、もう俺ら普通の仲じゃないじゃん。

こんなに近くにいるのに、その肌に触れることも出来ない方が不自然だと思う。

俺の部屋着を放り投げてやれば、Aは無言でバスルームに入っていく。

これもいつものこと。

この状況にいつまでも甘んじてるAに、今夜は刺激を与えてやらないと。









お風呂上がりのAはいつも艶かしい。

普段はわざと見ないふりをして気を逸らしてるけど、今夜はその髪に触れてみることにした。

「先に飲んでて」

Aの好きなカクテルの缶を手渡して、さりげなくその髪に指を乗せて、

「すぐに戻るから」

意味ありげに微笑んで、すぐに指を離した。

それだけで、Aの瞳は潤み始める。

どうすんの？

ちゃんと言える？

俺に、好きだって。

俺が居ない間に、ちゃんと覚悟決めといて。

3→←DON'T WANNA DIE …りたわかめ…1

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す