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「やっぱ俺らの距離、遠くね?
そういうのが寂しいんだけど、俺」

電話から聞こえてきた声があまりに寂しそうだったから、つい柄にもなく言い訳を始めてしまった。

「違うって
そんな深刻な話でもないし、もう終わった話だから」

「言わないつもりだったわけ?」

「···まあ、そうだけど」

「話してよ
終わったんなら、よくない?」

なんでだか北山くんに、元彼の話をするのは気が引けるんだ。

あまり知られたくないような、そんな感じ。






「霞さんにはどこまで聞いた?」

「なんにも
話を聞いてやれって言われただけ」

霞さん…、世話焼き過ぎない?

「で、何の話?
聞かないと、気になって寝れないんだけど」

彼はこういう時、なかなか引かない。

仕方なく、今日の昼休みの出来事を話して聞かせていたら、どんどん相槌を打つ彼の声色が変わっていく。

「それ、ちゃんと断れてんの?」

明らかに不機嫌な声になった彼は、ボソボソとそう訊ねたあと、

「…やっぱ、行くわ
これから」

そう言って、勝手に電話を切ってしまった。








待って。

行くわって言った?

しかも今から?

もう日付もとっくに跨いじゃってるのに。

急いで部屋を片付けたり、着替えたりしていたら、15分も経たないうちに.外から鍵のシリンダーが動く音がした。

「おつかれー」

目も合わせないで怠そうに部屋に入ってきた彼は、靴を脱ぐと慣れた様子でいつもの席に座って、

「なんか、我慢できなくて来ちゃった」

とか言い訳しながら、隣の席をポンポンと叩いて、私も座るように促してくる。

だけど席に着いたら、速攻で頭ごと抱えるようにして抱きすくめられた。

最近の彼は、いつもこうだ。

私を驚かせるようなことをしてばかり。







そして、私の頭にちょこんと顎を乗せると、不満げに呟いた。

「何、あれ」

「···何って?」

「さっきの電話
霞さんに教えてもらってなかったら俺、何も知らなかったわけ?」

「だって···」

そう言いかけた先の言葉を、ぐっと飲み込んた。

だって、あなたは彼氏じゃないじゃん。

言う必要なくない?

なんて言ってしまったら、彼は簡単に傷つきそうだから。








「なんか寂しいんだけど」

頭の上から聞こえてくるその声が、意外にも本当に寂しそうで、

「ごめんね」

思わず私は謝ってしまった。

「なんかしっくりこなくない?この状況
Aの元彼の話とか聞いちゃうとモヤモヤして、我慢できなくなった」

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りたわかめ(プロフ) - えぴさん» ありがとうございますm(__)m (2022年1月2日 21時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
えぴ - ほんとにリアルすぎて最高です! (2022年1月2日 18時) (レス) @page21 id: 06d564cdce (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - えりさん» 本日、移行いたしました。えりさんをドキドキワクワクさせられますように(*'ω'*) (2020年2月7日 23時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - renaruriさん» 更新いたしました。ちょっと急展開になってるかもです(/ω\) (2020年2月7日 23時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - moraさん» やったー!いい感じに予想を裏切れてる?私w moraさんの予想を裏切れるよう頑張ります(*'ω'*) (2020年2月7日 23時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わかめ | 作成日時:2019年9月28日 20時

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