花朝月夕

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仕事始めの日、正直私は出社したくなくて、部屋でギリギリまでウダウダと悩んでいた。

超カッコ悪いことしちゃったよね、私。

飲み会を途中で帰っちゃったり、帰って来いって北山さんに言われても頑なに断ったり。

せっかくの飲み会なのに、霞さん達を嫌な気分にさせたり。

いい大人が新年早々こんな恥ずかしいことをして、しれっと「おはようございまーす」なんて出勤出来るわけもなく。

臆病な私は、時間ギリギリに研究室に入って、挨拶もそこそこに仕事に取り掛かるという、姑息な手段に出ることにした。









なのに、昼休みになると、霞さんはいつものように、

「Aちゃん、ランチ行こ」

なんて、笑顔で誘ってくる。

霞さんは大人だもんね。

だったらいっそのこと、この間のことはなかったことにしてくれないかな。

だけどそんなことは起こるはずもなく、席に着くやいなや、

「Aちゃん、この間は本当にごめん！」

って、拝むように謝られてしまった。

「いえいえ、私こそ申し訳ないです！
空気読まないで、場をしらけさせて」

「違うって、一番悪いのはうちの旦那だから
Aちゃんに失礼なことばっか言って」

次第に矛先は霞さんの旦那さんの方へ向かってしまい、

「大体、Aちゃんが恋愛経験が少ないから、絶対に北山くんに惚れるとか勝手に思い込んで
あいつ、本当にくだらない」

って、延々と愚痴られたけど。

…その言葉に私はけっこう、ぐっさり傷ついたんですけど！

やっぱり私は、恋愛経験少なめの、頭でっかちＴ大女子って思われてたんだろうな。

北山くんにも。









「あの夜、北山くんうちに泊まったんだよ」

「そうなんですか」

適当に相槌を打ってみる。

本当は彼の話はもう聞きたくない。

「朝方まで、３人で飲んでたの
うちの旦那がAちゃんに言い過ぎた、悪いことしたって凹んでたから、北山くんも気になって帰れなかったんじゃないかな」

「そうなんですか」

…って、あれ？

私さっきから「そうなんですか」しか言ってない。

「北山くん、あの時私達の話聞いてたんだって」

「みたいですね
電話で聞きました」

「そっか、電話貸してあげたんだっけ
でね、Aちゃんの話になったんだけど
北山くんはAちゃんのことが気になるんだって
…あ、恋愛系の「気になる」じゃないよ？
気になるキャラ…、みたいな？」

何それ！

気になるキャラって！

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