7 ページ7
襖の向こうでは、横尾さんが食事を作り終えて、１人でちゃぶ台で夕食を取っているのがわかる。
そうだよね。
この家では、個人主義のルールが敷かれてたんだった。
私が横尾さんの仕事に介入しちゃいけなかったよね。
…これからは、ただのバイトとして控えめに接しよう。
でもね、ほんとは力になりたかったんだ。
必要としてほしかった。
だから私は、部屋に引きこもって、ベッドの中でみっともなく、グズグズと泣いてた。
夕食を終えた横尾さんが洗い物をして、そのままお風呂にお湯を張って、
２階まで着替えを取りに行ってるのも。
この部屋にいると全部わかるんだよ。
横尾さんの一挙一動が。
それがなんだか切なくて、余計に私を引きこもらせた。
横尾さんが２階の自室に戻ってから、私もシャワーだけ浴びよう。
…で、そのまま寝てしまおう。
単純な私は、一晩寝れば忘れられると思うんだ。
横尾さんがお風呂から出てしばらく経つのに、一向に２階に上がって行く気配がしない。
…早く２階に行ってくれないかな。
シャワー浴びちゃいたいんだけど。
どうやらちゃぶ台の辺りにいる気配がするから、また書類でも開いて電卓でも叩いてるのかな。
…もういいや、このまま寝ちゃおう。
そう思った時、遠慮がちに襖をノックする音がした。
「…A？
起きてる？」
って、遠慮がちに。
私は反射的にベッドの上に正座して、
「起きてます！」
とか、鼻声のまま律儀に返事をしてしまう。
だって私にとって横尾さんは神だから。
神の命令は、絶対だから。
「飯食った？」
「まだです。」
「食わないわけ？」
「今日はやめときます。」
「風呂は？」
…って、何だ？今日の横尾さんは。
いつも私が何をしようが、全く気にも留めてなかったくせに。
急にお節介モードじゃない？
「…出てこいよ。」
横尾さんは静かにそう言うと、また襖をノックした。
「今日は悪かったって…。
言い過ぎたわ。」
何でそんなこと言うかな。
さっきまで地面にめりこむくらい凹んでたから、そんなこと言われたら余計に泣けてきちゃうじゃん。
「出てきて飯食えよ。
Aの分も作ってるから。」
横尾さんにしては優しい声で、そう言われても、一回堰を切っちゃった涙はもう止まらないんだって。
無視してそのまま布団に潜り込めば、もっと泣きたくなった。
もう優しくしないでいいよ。
どうせ私のこと、めんどくさいとか思ってるくせに。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1498人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
わかめ(プロフ) - くーさん» ありがとうございます(*^-^*)私も本当に横尾さんのヒモ状態が思い浮かばず、ガチで悩みました。一、二を争うとか…、ありがとうございます。またボチボチRAIBOWも書いて行きますので、どうぞよろしくお願いします(*^-^*) (2018年1月21日 19時) (
レス) id: 8af18b42f1 (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - ★mmiioo★さん» ありがとうございます！これですべて完結しました♪こういう関係のお話を書きたいなー、とかずっと思ってまして、夢が叶ってよかったです(*^-^*) (2018年1月21日 19時) (レス) id: 8af18b42f1 (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - にかはるかさん» コメントありがとうございました！だいぶお返事が遅くなってしまい…、大変申し訳ございません(/ω＼)私もこの甘系の横尾さんを書くのが楽しみでした。またRAINBOWもありますので、読んでいただけたらうれしいですー(*'ω'*) (2018年1月21日 19時) (レス) id: 8af18b42f1 (このIDを非表示/違反報告)
くー(プロフ) - 完結お疲れさまでした!!最初ヒモ男子な横尾さんが想像出来なかったのですが、上手くまとめましたね。今までのヒモ男子のお話の中でも一、二を争う好きなお話でした。続きが気になるのでまた思い付いたらヨロシクお願いします。 (2018年1月8日 18時) (レス) id: 186d620cf9 (このIDを非表示/違反報告)
★mmiioo★(プロフ) - 完結おめでとう。この２人の雰囲気、すきです。兄妹のような、家族のようなあったかい愛情が感じます。 (2018年1月8日 15時) (レス) id: 84a8c23914 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：わかめ
| 作成日時：2017年7月20日 23時
