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病院へ通うようになって20日くらい経った昨日。
いつものように病室に入ろうとした私は、裕太のご両親に呼び止められてしまった。
『毎日、お見舞いに来てくれるけど、もしかしてAさんは裕太とお付き合いされていたとか、そういう関係だったんでしょうか?』
そう訊ねられた私は、答えに詰まってしまった。
2人が、憐れむような申し訳なさそうな目をして私を見てたから。
だからつい、
「…違います
ただの同僚です
同期で仲が良かったので…」
つい、そんな嘘をついてしまった。
きっと、胸を張って言えなかったんだと思う。
裕太もご両親に私のことは話してなかったと思うし、社内ではあの2人しか私達の関係のことは知らないわけで。
『もしそうなら、無理なさらないでくださいと言おうとしてたんです
裕太の記憶は、戻るかどうかわかりません
怪我が治って退院したら、地元に連れて帰ろうと思ってます
これからは家族が面倒を見ますので』
そこまで言われても、私はまだ希望を捨ててなかった。
その日も裕太の病室に通ったし、そして今日も。
だけどあなたは、病室に入って来た私にいきなり、
「あのさ…、ずっと気になってたんだけど
聞いていい?」
ずいぶん心を開いてきたくせに、遠慮がちにそんなことを訊ねてきた。
「何?」
「何で…、毎日来てくれんの?
俺ら、なんか特別な関係だった?」
そう聞かれて、私はやっぱり答えに迷ってしまった。
もし私が裕太の立場だったら、どう考えるだろうって。
全然知らない人が目の前に現れて、「Aの彼氏だよ」って言われたら、すんなり受け入れられるんだろうか。
きっと違和感だらけで、その人に優しくされる度に思い出せない自分に腹を立てて、罪悪感を覚えちゃうんだろうな。
そう思ったら…、本当のことを言えなくなった。
「…違うよ、ただの友達だよ」
「仲が良かったとか?」
「うん」
裕太は相変わらず遠慮がちだし、私はなるべく平静を装って言葉を返していたけど。
「あのさ…、もう来てくれなくていいから」
…ああ、とうとう言われてしまった。
少しだけど、予感はしてたんだ。
「正直、知らない人から親切にされるのは、気持ちが悪いっていうか…」
裕太の姿をしたその人は、裕太の声をして、そんな残酷なことを口にした。
「だから、もう来ないで」
この時、私の中でポキリと、何か太いものが折れる音がして、
目の前にいる裕太が、本当に他人のように思えたんだ。
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りたわかめ(プロフ) - くるりさん» まだ読んでいただいてたらありがたいです。地味に更新しました(/ω\) (2021年6月15日 22時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
くるり(プロフ) - キュンキュンしたり切なくなったりしながら読ませていただいてます!これからの展開がとても楽しみです。更新大変だと思いますが無理せず頑張ってください!応援してます! (2020年8月19日 9時) (レス) id: e6324db40e (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - ゆりかさん» こちらこそ読んでくださってありがとうございます!実は本当はもっと悲しい設定にする予定だったんですが、書いてるうちにこんな感じに仕上がってしまいましたwこれからもどうぞよろしくお願いします<(_ _)> (2020年3月17日 2時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりか(プロフ) - いつもいつも楽しく読ませて頂いてます!前の記憶を覚えていないもどかしさであったり、悲しいところもあったり、キュンキュンしたり、本当に大好きなお話です!本当に面白いです!次回の更新も楽しみにしています(^^) (2020年3月9日 5時) (レス) id: 6a4601e7a5 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - みなさん» お返事遅くなりまして、申し訳ございませんでした!記憶喪失になっても、本能で好きになってしまう的な話が書きたくて(/ω\*) (2020年1月13日 21時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:わかめ | 作成日時:2019年10月27日 16時