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車に乗ってもやっぱり先生は無言で、息が詰まる。

何か話さなきゃと思うたびに、鼓動が早くなって胸が苦しい。

もう好きじゃないはずなのに。

何でこんなに苦しくなったりするんだろ。

運転席で真っ直ぐに前を見てる先生の横顔を、チラリと窺い見た。

その綺麗な顎のラインと涼し気な目元、そして、眉間に寄せられてる皺。

…やっぱり、かなり怒ってんじゃん。









「先生、怒らないの？」

そう聞いた途端に、

「怒ってるよ。」

って、速攻で帰ってくる。

「怒ってるけど。
Aのことを叱れる立場じゃないから。
俺は。」

真っ直ぐ前を向いたまま、チラリともこちらを見ようとしない、その横顔をずっと見つめてた。

やっぱり、好きじゃなくなるのなんて無理だ。

今だって、こうして先生の横顔をずっと見ていたくて目がそらせない。

「俺も悪かったと思ってる、今回は。」

「何で？」

「Aのことを放置してたから。
でも、それはAが俺と一緒にいるのは苦痛だろうな、って思ったからで。
俺がいなかったら、Aは落ち着いて勉強ができるんじゃねーかと思っただけ。」









「今日、私が学校に来てないの、気付いてた？」

恐る恐る聞いてみた。

先生は絶対、本当のことを言ってくれると思ったから。

「気付いてるわ。
当たり前じゃん。
いつも進路指導室の明かりがついてるかどうか、確認してたし。
今日だって、家と携帯に鬼電してたのに。」

そっか…。

気付いてくれてたんだ。

それだけでうれしくなってしまう自分が、なんだか嫌だった。

だから、そんな気持ちを断ち切るみたいに、

「もう、特待生やめるね。
ちゃんとお母さんにも話して学費も払ってもらう。」

そう打ち明けた。

どうせ、補導されるような特待生は学校の宣伝にもならないだろうし。









「…またそれ？
お前は逃げてばっかだな。」

「だって補導された時点で、特待生は解除になるじゃん。」

「ならないよ。
だって、教頭にしか言ってないし。
警察から電話が来たことなんて。」

「…どういうこと？」

「俺が電話を取ったから。
教頭に報告したら、勉強漬けでストレスが溜まってるんだろうって、Aのこと不憫がってた。
今日のことは問題にしないってさ。」

「別にストレスなんか溜まってないし。」

そう言ったら先生は、運転しながら左手で私の頭に手を置いた。

「嘘つけ。
溜まりまくってるくせに。」

って、呆れ笑いしながら。

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