ショコラアレルギー chapter８ (ページ33)

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そんな段ボールだらけの部屋で週末を過ごし、今夜はゼミの送別会。

私はもちろん生徒の１人として出席するわけなんだけど、飲み会が始まってから先生の周りには先輩が取り囲むように座ってて、２年生の私達は全く近づけない感じ。

烏龍茶を飲んでる先生に、

「横尾先生、飲まないの？」

って先輩達は大騒ぎ。

私の周りには同級生がいて、卒業後の話題でもちきりだった。

中学か高校の社会の先生になりたいって子もいれば、実家の家業を継ぐ子もいて、みんなもういろいろ考えてることにひたすら驚いた。

繭ちゃんが、

「私は院に進んで研究者になる！」

って宣言した時は、さすがにみんなどよめいていた。

だけど、

「Aちゃんは？」

って聞かれた時に、私は何も答えられなかった。

みんなの視線が一気に集まるから、尚更何も言えなくなって。

だけど、

「お前も大学院目指してんじゃなかった？」

って、助け舟を出してくれたのは、いつの間にか後ろに立ってた先生だった。

トイレで席を立ってたらしく、何故か私の隣に座ってくる。

お陰で話題は一気に先生の話に変わってしまい、上級生の女子の先輩達もいつの間にか、こちらの席に移動してきてしまう。

そこからはもう、質問攻めの嵐で。

珍しく饒舌にプライベートな質問に答えていく先生に、私1人が隣でヤキモキしてた。

「奥さんも一緒に行くんですか？」

そんな先輩の問いかけに、先生は至って冷静に、

「いや、置いていく。」

なんて答えるから、先輩達は騒ぎ出す。

「えー？！
単身赴任ですか？」

「そう。」

「先生はずっとあっちに住むんですよね？」

「まあね。
奥さんはこっちでまだ色々としなくちゃいけないことが残ってるから。」

「仕事ですか？」

「…まあ、そんなとこ。」

そんな先生の回答に、隣で１人でハラハラしている私。

「奥さんって、何の仕事してるんですか？」

なんていう先輩の容赦ない質問に、

「仕事っていうか、まだ学生だから。
卒業したら連れていく予定。」

いきなりそう答えるから、先輩達はますます大騒ぎし始める。

「ちょっと待って！
まさか、このゼミにいるとかじゃないですよね？」

なんて先輩が慌ててるのを、先生は涼しい顔をして聞いているだけ。

何も答えないっていうことは、肯定してるのと同じだよ？

何でこんな爆弾みたいな置き土産をしていくかな。