原色Ｂ型男子図鑑→２

39 ページ39

「…誰！？」

電話の向こうから二階堂くんの声が聞こえてくる。

電話をかけといて、いきなり「誰？」って、二階堂くんらしいな。

まあ、二階堂くんはスマホを落としたのかもって思ってるかもしれないし。

「私だよ、A。」

そう告げれば、安心したような二階堂くんの溜息が聞こえてくる。

「何やってんの？A
何で俺のスマホ持ってるわけ？」

「だって二階堂くんが寝てるのに、ずっと鳴ってたから持ってきちゃった。」

「もしかしてバイト先から電話がかかってた？
俺、超遅刻しちゃってて、これから電話しようと思ってたんだけど。」

「大丈夫だよ。
今日は休んでいいんだって。
夕方のバイトまで寝ててよ。」

「行くって。
無断欠勤なんかしたら迷惑がかかるし。」

意外とそういうとこ、律儀だよね。

だけど、二階堂くんは働きすぎなんだよ。









「大丈夫。
二階堂くんは無断欠勤してないから。」

「…は？意味わかんないんだけど。」

「代わりの人を立てたから。」

「代わりの人？
誰？
まさか玉？」

玉森くんなわけないじゃん。

玉森くんは春休み中、ずっと仕事が入ってて忙しいって愚痴ってたし。

「違うよ。」

「じゃあ誰？」

電話の向こうの二階堂くんの声が、焦ってるのが楽しくて、つい焦らしてしまった。

「誰だと思う？」

「いいから、早く言えよ。」

テンパってる二階堂くんは可愛い。

意外と使命感が強くて、何でも１人でなんとかしようと頑張っちゃう二階堂くんは、傍で見てて切なくなることもあるけど、

その一方、しんどいくらいに愛しい。









「私だよ。」

そう打ち明けてあげれば、今度は驚きで電話の向こうでフリーズしてるし。

そんな反応がいちいちツボなんだって。

クールぶってカッコつけてる時もあれば、無防備に全開の笑顔を見せてきたりする。

そんないろんな顔を持ってる二階堂くんが、好き過ぎてどうにかなりそう。

…早く会いたいな。

バイトなんか早く終わっちゃえばいいのに。

「本気で言ってる？」

すぐに再起動してきた二階堂くんは、早口でそんなことを聞いてくるけど無視。

「現場どこ？
今すぐ交代するから。」

「あ、もう次の現場に着いちゃった。
終わったら電話するね。」

そう言って二階堂くんのスマホを電源ごと落としておいた。

40→←38

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す