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二限の授業を終えて中庭を歩いていると、
見覚えのある人が目に入った。
私が気づいたのと同時に、その人も｢あっ｣と声を漏らす。
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｢この前のトマトちゃんだ。｣
トマトちゃん。
それは状況的に間違いなく私のことだけど、なんとなく受け入れるのが嫌で通り過ぎようとした。
｢あ、そういうことするんだ。｣
後ろから手首を引かれて軽くよろける。
人の手首掴むの癖なのかな。
『なんですか。』
仕方なく振り向くと、ほっぺをぷくっと膨らませて私を睨む大我さん。
｢無視しないでよ。｣
『だって私トマトちゃんじゃないし。』
｢えーめんどくさー！｣
って今度はニコニコしてる。
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｢はいはい、Aちゃんね。
次のコマ暇だからちょっと話そうよ。｣
手首を掴まれたまま、近くにあったベンチに連れていかれた。
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『大我さんって、一人っ子でしょ。』
隣に座ってペットボトルのお茶を飲む大我さんに聞いてみる。
｢えっ、そうだけど。なんで？｣
『誰が見ても分かります。』
｢…全然自覚ない。｣
『ないんだ…。』
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それからしばらくたわいもない話をした。
コロコロ表情が変わる大我さんは、ずっと見ていても飽きない。
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話にひと段落ついたとき、
大我さんが急に真面目な顔をして
｢Aちゃん結構笑うんだね。｣
そう言った。
何が言いたいのかよくわからなくて首を傾げる。
｢いつもつまんないって顔してたから。｣
いつも、という言葉に引っかかる。
大我さんも同じ違和感を感じたのか、慌てて付け加えた。
｢あっ、いや…樹によく相談されててさ。2人を見かけるたびに。｣
誰とは言わなかったけど、樹と大我さんが私ともう1人見かけるとしたら
それは北斗のことだろうか。
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『つまらなそう…でした？』
自分ではそんなつもりはなかったけれど、
そう見えたのなら、そうなのだろう。
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｢んー、いやよく分かんないんだけど｣
｢俺は今のAちゃんの方が
いいなって思うよ。｣
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髪を掻きながら呟くその姿に、
胸が締め付けられるのを感じた。
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作者名：渓徳 | 作成日時：2022年11月8日 0時
