アンリーシュコントロール (ページ15)

今日:9 hit、昨日:18 hit、合計:143,657 hit

14 ページ15

.

｢この前食堂で一緒にいた子？｣

『…はい。今すぐ家に来てって。』

私を見つめる瞳が揺れる。

｢そっか、急ぎの用事かな。｣と自嘲的に笑う彼の横顔に、胸がチクリと痛んだ。

大学にいると嘘をついた私に何も聞かないのは
大我さんの優しさだろうか。

『ごめんなさい…私、行きますね。』

｢…うん、気をつけて。｣

北斗に嘘をついたことへの後ろめたさ、不安、
この場を離れることへの寂しさ、申し訳なさ、
色んな感情で頭がいっぱいだった。

玄関まで見送ってくれる大我さんと目を合わせることができないまま、無造作に荷物をとる。

ドアの前で振り返ったとき、
彼は何かを言いかけてやめた。

.

｢楽しかったよ。ありがとう。｣

『こちらこそありがとうございました。
私も、楽しかったです。

…カフェオレもすっごく美味しかった。』

｢その辺に売ってるやつだけどね？｣なんて恥ずかしそうに言う彼に、

大我さんが入れてくれたから美味しかったんだよ
と言い返してあげたい。

｢またおいで。いつでも入れるから。｣

最後に見えた大我さんは優しく微笑んでいて
やっぱり心が温かくなった。

.

人と話すのってこんなに幸せなことだったんだ。

お互いに何も気にせず話したいことを話して、
お互いに笑う。

もしかしてこれが普通なのかな。

.

.

｢遅い。｣

.

普通って、なんだっけ。