消えてしまわないで Ⅲ (ページ20)

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翔馬side

アジは悔しそうに『もう来ない』と言ってくれた。

感謝しきれない人にこんな顔をさせるAの病気か許せない。

でも湧は違った。

湧は俺の話を聞いてからなんも迷いもなくAの病室へ足は向いた。

湧を引き止めようとした。もういいからって。十分くらいしてもらったからって。

秀「湧。もう俺達には何も出来ない。」

この1年、うっちーも黒ちゃんもそして俺もAに何もしてやれない自分が嫌だった。

ただずっと変わり映えしないAの姿を見てみんな無力な自分を嫌った。

『何も出来ない。』その言葉がどれだけ(支配してたか分からないくらいずっと頭の中にあった。

湧「俺も思ってったよ。『ただ傍にいるだけでいい』なんてそんな綺麗事だって。」

傍にいるだけでいい。そうよく言うけどさ傍にいたら何も出来ない自分が更に嫌になる。

湧「でもあいつが始めて指を動かした時のこと思い出したんだ。」

その時は本気でAの目が開くような気がしてみんな揃ってAをずっと見つめていた。

反射なんて嘘だって言い聞かせて目が覚めるを待った。

湧「Aの指が動く度思うんだ。反射なんてどうでもいい。こいつは生きようとしてるんだって」