運命(ymin) (ページ6)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:9,235 hit

2日目.指輪ページ6

2日目指輪

会えなくなるまでの時間を1秒も無駄にしたくなくて、1ヶ月間仕事を休んだ。

上司に電話で親戚が、と言うと何かを察したように承諾してくれた。全くの見当違いだとは思うが、それを狙ったところもあるのでお願いします。とだけ言って電話を切った。
先日大きい仕事が片付いたばかりだったので、気は楽だった。

1ヶ月よりもっと長いかもしれないし、短いかもしれないけど。

用意をして車を走らせあの海岸に向かうと、昨日と同じ服を着た慧が砂浜にいた。

砂浜に座って白い砂を触る慧は、今にも消えてしまいそうなくらい美しい。

「おまたせ」

と言うと、嬉しそうに笑顔を返してくれる。

そのまま砂浜に座り込んで2人でずっと話していた。

理解しているのかよく分からないけど、笑って聞いてくれてたってことはそういうことだよね？

留学中の友達がいる事、一緒にゲームをする人の事、俺に奢らせてくるかわいい友達の事

それから、少しだけ仕事の話もした。
ただ、全く分からないという顔をしたからすぐにやめてしまった。

そういえば、慧は何歳なんだろう。
俺よりも若いか同じだとしたらそう見えるし、年上だとしても納得してしまいそう。

「ねえ、慧って歳いくつなの？」

「涼介は？」

「27、だけど。」

「じゃあ俺は30歳。」

じゃあ、ってなんだろう。
最後の日に教えて貰えるんだろうか。

最後なんて、来て欲しくないのだけど。

そんなことを思っている間に、もう別れの時間となった。

「ねえ、明日は海に入らない？」

「海？」

「そう。水着持ってきてよ。」

いつか入りたいと思っていたけど、まさか、慧から言い出してくれるなんて。

「わかった、じゃあ、帰ろうか。」

別れはあっさりしている。

振り返って誰もいなかった時、なんとなく別れを焦らしてはいけない気がしたからだ。

帰り道、おしゃれな雑貨屋が目に入った。

そこで、指輪を買った。

リングの部分はシルバーで、小さな青い宝石が3つ埋め込まれている。

その隣には色違いで赤色のものもあった。

自分は指にはめないとサイズも分からないのに、慧のサイズは何故かすぐにわかった。

会計をする時に店員さんに彼女に送るのかと聞かれ、少し迷ったけどはいと答える。
すると、サービスです、と言ってラッピングをして貰えた。

軽くお礼を言って店を出たけど、渡した時の反応を想像してポーカーフェイスを保つのが大変だったのは秘密にしておこう。