暗殺教室～男装少女はマフィアのボス？～短編集 (ページ10)

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夏祭りと浴衣と花火と　＃５ページ10

渚side

貴「ん～、このかき氷っておいしいよな。渚」

渚「：：：」

貴「ん？どうしたんだよ、渚」

遠くに聞こえる祭囃子、けれど僕らがいるのは小さな誰もいない公園。僕と尭は青い座板に２本の鎖を支柱から吊り上げたブランコに乗ってかき氷を食べていた。

僕は定番のイチゴ、尭はメロンだ。

でも、僕が言いたいのはそれじゃない。何故、僕達が公園にいるのかと言いたいのだ。

渚「いや、僕はてっきりもう一回神社に行って存分に夏祭りを楽しむのかと思っていたんだけど：：：違うんだね？」

貴「は？夏祭りには行っただろ？かき氷を買いにさ」

渚「いやいや、それは買い物だから。夏祭りに行ったって事にならない！」

貴「怒んなよ～、ほら、俺のメロン味のかき氷を一口やるからさ。機嫌直せ」

と、言って僕にメロン味のかき氷をスプーンで差し出してくる尭。

それはまさにあ～ん状態であり、僕にとっては願ってもなかった事で：：：僕は大人しく、尭のかき氷を食べました。

うん、おいしい。

貴「おいしいか？」

嬉しそうに僕を見る尭。僕は照れくさくて目を逸らしながらおいしいと答えた。

貴「そうか、なら良かった。俺もこのメロン味のかき氷はおいしいと思ったんだよ～」

渚「そっか、イタリアにはかき氷みたいなものはないんだっけ？」

貴「今の所は知らないな：：：、あるみたいな事は言っていたけどな」

そう言って、かき氷をスプーンでざくざく削っていく。これだと、すぐに溶けちゃうんだけどな～と思ったけど、笑っている尭を見て言うのをやめた。

いや、悪い笑みじゃないよ？子供みたいな笑み、みたいな？

貴「日本：：：って、良いな」

渚「そう？」

貴「他の国にはない独自の文化を持ってるんだよな。とても面白くて興味がどんどん湧いてくるよ」

渚「じゃあ、日本に住めば？」

そう、日本に興味があるならこの国に住めば良い。そうなればいつでも会える。

けれど尭は僕がその言葉を言うことを分かっていたのか、苦笑いをした。

貴「言うと思った」

渚「え？」

貴「でも、それは『出来ない』と思う」

その言葉は尭の顔から真剣な答えだと受け取った。

でも、僕もそう言うと思っていた。尭にはファミリーの事があるから。

貴「あいつらを置いて自分だけ平和に暮らすのはダメだと思うから。それが、ボスとしての責任だと思うから」

渚「：：：うん、そうだね」

そんな僕達の間に、花火は儚く散った。