優しい思い出〜2〜 ページ3
迷子センターに着くと、お姉さんが私達を見て慌てて「大丈夫?迷子になっちゃったの?」と心配をしてくれた。
私は少年の手を引いてお姉さんに事情を伝える。
「はい、私は家族と離れて、この子はお兄ちゃんと離れてしまいました。名前は六波羅 (楓)です」
「この子は…」と後ろに隠れる少年を見る。名前を知らないと放送をかけてもらえない。お姉さんが名前を教えて欲しいと言ったが、少年は警戒しているのks完全に私の後ろに隠れてしまう。
「まあ…」
お姉さんが優しい笑みで困っている顔をする。私が名前を聞かないと!優しく優しく……私は後ろを振り向いて少年の両手を自分の両手で包み「君の名前は?」と心配させないように問いかけた。
少年は私の事を信頼しているのか、おずおずと名前を口にする。
「…しき…そうま…」
そう言ってから、また私の後ろに隠れてしまった。お姉さんの方に振り向くと「まぁ、可愛い!」と嬉しそうな顔をしながら私達を待機場へと案内してくれた。他の迷子はいなく、私とそうま君だけだ。
「……何かして遊ぶ?」
私の言葉に、そうま君は答える事なくあるポスターへと私の手を引っ張りながら連れて行く。その絵は、こぐまランドのイベントなどが記されており、キャラクターが書かれている。とても可愛らしく小さい子が心惹かれるデザインだった。小学生の私でも、面白そうだと感じた。
「可愛い!!こぐまちゃんがいる!」
ぴょんぴょんと跳ねるそうま君を抱っこして、ポスターを正面から見えるようにする。嬉しそうに見るその顔を見て私は小さく笑みを浮かべた。
「かえでおねえちゃん…」
「ん?」
嬉しそうにしていたそうま君が私の名前を呼んだ。私が答えると、そうま君は「何でぼくを助けてくれたの?」と言ったのである。
まさかそんな事を言われるとは思わなくて私は少し考えてからこう言った。
「君を……助けたかったから」
「ぼくを?」
不思議そうに私を見る。
「うん、君を!」
綺麗事かもしれない。それでも、助けたいという気持ちが私にはあったからこの子を助けた。
「……かえでおねえちゃん!!」
「ん?どうしたの?」
そうま君は何かを決心したかのように小さい拳を握り、私の方を見る。
「今度はぼくが助けてあげるからね!!」
「!……うん、よろしくね」
偶然出会った少年、そうま君。その約束が果たされるかは知らないけれど、私は優しい彼の言葉に大きく頷いた。
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作者名:keito | 作成日時:2023年5月30日 22時