迷子と救世主 ２ ページ13
貴「あの、イシガシさん！」
イ「はい？」
迷子になっていた彼女を見つけた私は惑星サンドリアスを案内しようと提案した。監視対象であり、神の生まれ変わりである彼女はこの大会の『鍵』になる人物。
一緒にいる事に問題は無い。だけど、彼女は不安そうな顔をして私に問いかける。
貴「仕事があるんですよね？私の事は良いので仕事を優先して下さい」
彼女の言葉に私は目を丸くする。だって、さっきまで自身の方向音痴で迷っていたのにまさか、また迷子になろうというのか？
彼女の目を見れば分かる：：：彼女は本気で言っているのだ。
貴「じゃ、じゃあ私はこれで！」
と、町と違う方向に行こうとする彼女の背中を見て私は小さく微笑む。天然なのかは分からないけど：：：彼女が私の事を思って言ってくれたのだと分かった。
少し嬉しい気持ちになってフフッと笑う。そして、歩いて行く彼女の背中に声を掛けた。
イ「そちらは町ではありませんよ？」
貴「あ：：：：：：そうですか」
そそくさと私の方に戻って来た彼女。私は一緒に行きましょう、と彼女の取っていたフードを被せてあげた。
私の言葉に彼女はうん！と可愛らしい笑顔で答える。
イ「まるで：：：」
貴「まるで？」
『あの子』と同じ：：：。
イ「いや：：：ごめんなさい。何でもありませんよ」
私は頭の中に思い描いたものを頭の隅に消し去る。彼女はもういない。そう、彼女は死んだんだ。
イクサルフリートと共に、『消滅』した。
？『イシガシ：：：また会おうね』
彼女は：：：あの子の生まれ変わりなのかな。
イ「さあ、行きましょう。おいしいお店を知っているんです」
貴「あ、はい！」
いや、やめよう。私の知っている彼女ではない。
この子に彼女の面影を重ねるのは：：：この子にも彼女にも失礼だ。
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作者名：keito | 作成日時：2018年1月10日 10時
