怪盗ジョーカー～満月の怪盗～２【スペード】 (ページ16)

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De chacun ne peut pas dire(それぞれの言えないこと)　スペードside ページ16

ダ「どうぞ、ハートさん。ダージリンです」

貴「さすが、ダーク・アイ。私の好きな紅茶分かってるね！」

ス「：：：何故、君がここにいるんだい？」

ソファーに座って、午後のアフターヌーンティーの時間を過ごしていた僕の所に：：：正確にいえば、僕の目の前にハートが気配を消して座っていた。

もちろん、僕はすぐに気付いたけど：：：何故僕の所にやってきたのだろうか。

貴「う～ん、アルタが紅茶を作れないから、代わりにダーク・アイに作ってもらおうと思ってね」

ス「ダーク・アイは僕の助手だぞ？」

貴「分かってるよ、それぐらい。今日だけ今日だけ」

怒らないで、と言わんばかりに僕を説得しようとしているハート。怒るもなにも、いきなり押しかけてきて逆に拍子抜けだ。

けれど、そうか：：：。

ス「アルタ君の具合はどうだい？」

アルタ君に紅茶を作ってもらえないとすれば：：：まだ、アルタ君の体が良くないんだと理解する。

これでも、少しの間アルタ君と仲良くなった身だ。アルタ君の体の調子ぐらいは聞いておきたい。

貴「：：：そうだね～」

能天気な声とは裏腹に、ハートの顔は徐々に曇って行く。アルタ君の容体は良くなっていない。曇った顔が僕にそう伝えているような気がする。

そして、ハートは一口紅茶を含んでから一言：：：放った。

貴「アルタが、『左目』を失った」

ス「！？」

貴「その代わりに、アルタに眠る『力』を呼び覚ました」

ス「アルタ君に眠る：：：『力』？」

伏せ目がちのハートが、重いトーンで言った言葉。それは僕に驚愕の事実を伝えた。

ハートの相棒であるアルタ君が、『秘密』を抱えていたということを：：：アルタ君があの筒の中に入っていた事も、その『力』に関係あると考えた。

ス「アルタ君って：：：君の『相棒』なんだよね？」

貴「：：：」

ス「：：：これ以上は聞いてはいけない？」

ハートは無言で、僕の言葉に頷いた。

ス「：：：分かった。君が言いたくなければ、聞かなかった事にするよ」

貴「ごめん：：：」

きっと、彼女は色んな事があって精神的に追い込まれているのだろう。だから：：：僕の所に来て相談しようとした。

けれど、言ってしまえば：：：アルタ君の『秘密』を言う事になってしまう。だから、だまってしまった。

ス「君って本当に秘密主義だよね。昔からそうだけど」

貴「貴方が言える立場？」

ス「：：：確かに、ね」

僕も、言えない事もあるよ：：：。君にね。