怪盗ジョーカー～満月の怪盗～２【スペード】 (ページ13)

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Le dos qui est rase (抱きしめられる背中) ページ13

アルタがぐっすりと眠った頃、私は飛行船の操縦桿を握って次への目的地へと向かっていた。

そしてこれからの自分の事も：：：考えていた。

貴「やっぱり、あの人から逃げられる事は出来ないのかな：：：ねえ、キング？」

ス「：：：やっぱり気付いてたんだね」

私の真後ろに立っていたキングに、私は後ろを向かずに渇いた笑みを浮かべながら問いかけた。

表情は見えないが、悲しそうな顔をするキングが浮かび上がる。

貴「ごめんね、途中で抜け出すなんてさ」

ス「いいや、君のおかげで助かった事もあったよ。感謝している」

貴「：：：そう」

私の一言で、キングとの間に沈黙が流れる。私からスペードに話す事なんて一つもないし、出来れば一人にして欲しい。

正直、邪魔なんだよね。

ス「邪魔：：：って思ってる？」

貴「！？」

私の心の意図を得たキングの言葉に、前に向けていた体を捻ってキングを目を丸くしながら見る。

キングは、両手を腰に当てながら首を傾げていた。

ス「図星？」

貴「確かにそうだね、本当は一人でいたい気分だからキングには会いたくなかった。君が私とアルタを心配して見に来てくれたのは嬉しいけどね」

ス「：：：」

貴「悪いけど、アルタへのお見舞いはやめてね。今は治療に専念させたいから」

我ながら、心配してくれて来てくれた人にひどい事を言っていると分かる。けれど私はジョーカーやキングみたいに優しくない。綺麗な心を持っていない。

純粋に『怪盗』をやっている人間じゃない。

キングの事を純粋に好きになれる女の子じゃ：：：ない。

貴「醜いな：：：私」

あの人の娘だからだろうか？あの人の血を継いでいるからだろうか？私は、こんなにも醜い心を持っているのだと改めて思った。

私は再び前を向いて、キングに言った。

貴「ねえ、キング：：：私の事を好きになるのやめたら？」

ス「：：え？」

貴「見たでしょ？さっきの私を」

ス「：：：でも」

貴「私、貴方が思っているより良い人間じゃないんだよ？分かってる？」

そう、私はシャドウ・ジョーカーと同じだ。私は『あいつ』を復讐しようとしているのだからね。

そして私は彼に帰れと言おうと体を後ろに捻ろうとした時だった。

ス「分かってるから、何？」

貴「？：：：」

操縦桿を握る手に彼の手が置かれ、もう一つの手には、彼の手の指と私の手の指が交差するように繋がれた。

首には彼の吐息がかかる。

ス「ごめん、やっぱり君が：：好き」