だって、わたしがいる【銀魂】9

忘れねぇでくんな ページ48

前、話したとこで待っててくれ。


書類を早々に終わらせた土方さんは
見廻りに出る直前、それだけ言っていった。


正直なところ、逃げたい行きたくない。


でもそんなことしたら、
絶対に追い掛け回され、怒鳴られる…
それに、
人の真摯な気持ちには
向き合わないといけない。

大切な人たちが、
わたしに教えてくれたことだ。


ああ。それでも



「…苦しい」


沖「チョコでも食い過ぎたか」


「！沖田隊長…」


沖「…って、顔じゃねぇな」




仕事を終え、私服に着替えて
さあ、行こうと思ったものの
玄関に座り込んでしまっていた
わたしに、沖田隊長が話し掛けた。

その手にはタオルを持っていたので
これから、お風呂に入るのだろう。



沖「出掛けるんで？」


「…えぇ、少しふらっと」


沖「んな顔すんなら、行かなきゃいいだろぃ」


「…へ、いや、普通ですよ？」


沖「お前、俺をナメてんで？」


「……すみません」



はあぁっ、とわざとらしく溜息を吐き
わたしの隣に座り込む沖田隊長。
赤い眼はわたしをじっと見つめる。



沖「お前はどうにも、哀れでぃ」


「…！哀れ…？」


沖「ああ。
俺も似たようなもんだったかんな。
よく分かりまさぁ」


「……どういう意味、ですか」


沖「まんまの意味でぃ。
信じてねぇんだろ。誰のことも」


「っ！？？」


沖「…てめぇの弱さのせいか、
境遇のせいか、ずっぽり抜け落ちてる
それは、いつもてめぇの邪魔をしやがる」


「………、、」



沖田隊長は合わせていた視線を外し、
まるで独り言かのように
唇を動かした。まるで、
自分に話しているように。



沖「でもな、分かったこともあるんでぃ」


「…なんですか？」


沖「てめぇだけは裏切らねぇって決めりゃいい」


「…！」


沖「他の誰をも信じられねぇなら、
揺るがねぇ自分を信じてりゃいい。
そしたら、泥臭ぇ腐れ縁なんてモンで
繋がっちまってる奴らにゃ、
いつの間にか、届いちまうのさ」



鬱陶しいくれぇにな、と付け足すその様は
少し面倒そうに、でも嬉しそうに
繋がり合う人たちのことを考えているのだろう。

ああ、そうだ。

わたしはこの人たちのそんな絆に惹かれ、
女とバレてもここに居続けたかったんだ。



沖「人間なんてそう変われねぇ。
信じろ、と言われて出来るもんじゃねぇ。
ただ、どんな形であれ
お前を待ってる人がいるこたぁ、
忘れねぇでくんな」




そう言うと、ぽんっと
わたしの頭を撫でお風呂に向かった。

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