だって、わたしがいる【銀魂】9

蝕んだ ページ25

「戻りましたぁ」


土「おう」




屯所に戻ってくると
何やら、皆が騒ついていたけど
どうしたんだろう？
ちらちら見てくるのを横目に
襖を開ける。
土方さんはいつも通りのようだ。



「飛脚取れたので
明朝には届くそうです」


土「そうか…」




書類から顔を上げずに返事をする、
いつもの土方さん。

朝から意識して
わたしもいつも通りにしているが、
昨夜のわたしのとんでもない行動を考えると
顔から火が出そうになる。

わたしは、なんて恥ずかしいことをっ。




土「……A」


「っひ！？？」


土「……悪い」


「……へ？」



思い出して、顔を熱くしていると
土方さんに急に呼ばれた。
謝罪の意図が汲めず、振り返ると
土方さんは身体毎、わたしに向けていた。



「…何が、ですか？」


土「………昨日のことだが、」


「……！？？？」


土「隊士たちにバレてるみてぇだ…。
俺も浅はかだった、どうかしてた」


「……、、」






どうか、してた。







「い、いえ…わたしこそ、すみませんでした」


土「ここで何か言えば、また騒ぎ立てる奴らだ。
ナメられねぇよう、とりあえず俺らは仕事をするぞ」


「………そうですね」


土「…どうした？」


「…いえ？何も！」


土「……そうか、じゃあ、これ。
あと確認だけだ。全部頼む」


「はい…」








おかしいな。






わたし、



この感情、知ってる。







随分と前に、
わたしを蝕んだことがある。






この人の一番、大切なモノは
真選組だ。


それは確かで、
わたしにとって
哀しい事実などではない。


そうじゃなくて、







好き、に
なればなる程



触れれば、
触れる程



大切に思えば、
大切になっていく程









いつか、




失うのだろうか。





と考えてしまう。









心の中で、
言葉にするだけで
身体がゾワッとする。


誰かを大切に想うことは、
誰かをいつか失うこと。



それでも、



自分の気持ちから
逃げちゃダメだって、
俺も逃げなかったぞって、
教えてもらったのに。





おかしいの。





わたしが今、不安気に見つめる
その恋しい横顔を



欲すれば、
欲する程



失う恐怖に脅かされる。






恋人、になれたとして
わたしは上手くやっていける？
経験も知識もないのに？

土方さんが、何も言わないなら
それは、わたしと
恋人になりたいと思ってないから。
面倒事を嫌う人だ。
その可能性は高い。



このまま、でも、
いいんじゃないかな。

余所見 : 山崎→←どうなってる？ : 土方

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