この手を離すな【銀魂】4

大変な仕事 : 土方 ページ36

土「これ…隊士全員のか」


「いえ、全員のはさすがに洗えないので
二日に分けて、いつも洗ってるんです」


土「これで半分か…。大変だな」


「はは、何言ってるんですか」



洗濯物の前に座り、Aが畳みながら笑う。
俺もその前に座り、でかいシーツを広げる。



「毎日毎日、たくさんの人を
自分の命をかけて戦い、守ってる。
それ以上に、大変な仕事なんかありませんよ」



開け放たれた障子から
柔らかな風が吹き込んで、
Aの黒い髪を揺らし
洗剤の香が空気を覆う。
畳もうと、広げたシーツが靡いて
揺れ動きながら笑顔を覗かせた。

誰かを守ってるつもりなんて、
この仕事をして来て意識したことはない。
近藤さんを信じ、てめぇの任務を全うして来ただけ。
それが結果的に、町民を守って来ただけに過ぎない。

でも、今は



土「……そうか」



心の底から、
お前を守り抜きたいと思う。

警察として、
人として、



土「………」


「土方さん？」


土「あ？」


「シーツ、置いといてもらえれば大丈夫ですよ。
運んでもらって、ありがとうございました」



正座をして、シーツを広げたまま
ぼんやりしていた俺に
Aはシーツをそっと受け取りながら言う。



土「あ、おう。…あのよ、お前悩ん、」


「え？」


土「いや、なんでもねえ。
…近藤さんが電話してたとか、
何とか言ってたような気がすっからよ…」


「ああ、そうなんです。
ちょっと思うところがって
万事屋さんに相談しようと思ったんですけど。
銀時さんが数週間、仕事でいないとかで
わたしも自分のことはまず、
自分で考えてみようと…それで、
結局依頼はしませんでした」


土「……そうなのか」



俺は立ち上がるが、もう一度
Aの前に座る。



「…？」


土「……それ、」


「…どれ？ですか？」


土「…依頼、万事屋に依頼しようとした、それ」


「…はい？」


土「俺じゃ、ダメか？」


「……え？」


土「俺には、話せねぇことか…？」


「……」


土「……奴に、伝えたいのか？」



Aの顔を見れないまま、
畳まれる事を待っているシーツを見つめる。
少しの沈黙がどうしてこんなにも、辛ぇのか。



「伝えたい…」


土「…！」


「と言うか…、なんて言ったらいいか
分からなかったんです」


土「‥‥‥それは…」



想いをどう、伝えたらいいのかってことか。



「自分らしさが分からないなんて、
言われても困りますよね？」


土「…………え？」


「え？」

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