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理由 ページ29

ぐつぐつ…



「……ふぅ」



一人分の食事を作るのは
案外、難しい。
どのくらい食べるかしら、
これでは足りないかしら、
なんて考えていたら
こんな時間になってしまった。

でも、まだ帰って来ない。



「………」



ぱちん、

火を止め蓋をして
なんとなく、玄関に向かってみる。
火を使っていたからか
廊下に出ると足先が悴むほど
冷えるようになって来た。
もう、暦の上では冬だもの。
胸の奥底から、息を吐き出せば白い息が出て
煙草を吸ってるみたいだわ、と思った。
玄関を少し出て、門の外を見つめる。
門番さん以外の姿は見えない。
今宵は、星がとても綺麗だった。
わたしはまた何度か、
すうぅっと息を吸っては吐いて
あの人の真似をしてみた。
夜空に浮かぶ星がきらきら、揺らめく。
月が見えないなぁ。
こんなに天気がいいのに。
新月なのかなぁ。

いつも、お客さんが来る前
こうやって空を見上げて、
ぼんやり過ごしていたっけ。
禿に成り立ての頃は、毎夜毎夜
夜空を見上げながら泣いて
姉さま方に叱られて、叩かれたっけ。


『笑うことも下手くそなのかい!
どんくさいガキだね!!』


思い出しても、それほど
もう辛くはないけれど
ここに来て、いろんな人に出逢って
いろんな人生があるんだなと知って
羨ましい訳でも
妬ましい訳でも、ないけれど
どうして、こんな風に
生きてこなければならなかったのか、
単純に不思議に思う。
もちろん、どこにも答などないのも
分かってるんだけど。


わたし、って何だろう。


わたしは、何かを選択して来たっけ。
何かを望んで来たっけ。
自分の価値を見つけなければいけないと、
見つからないのであれば、ないのであれば、
もう終わらしてしまおうかと
あの、青空が綺麗だった、
死ぬのであろうと悟った日を思い出す。


わたしらしさ、って、


眼を閉じて、
もう一度、深く息を吸って吐く。
胸の奥が冷え逝く。
痛むのはきっと、それが理由だよね。



すっ…



「…っ」


土「何してんだ、こんなとこで」



頬に添えられた温もりと、
優しい声に眼を開ける。
土方さんが、白い息を吐きながら
わたしの顔を覗き込んでいた。



土「冷えてんじゃねえか。
なんだ、また外出か?
だったら、俺が、」


「土方さん」


土「あ?」


「お帰りなさい」



わたしが微笑むと、
土方さんは眼を丸くした。
頬に触れる指が長く、温かい。
土方さんは何も言わずに
指を滑らせ、わたしの髪を
耳にかけ、ぽんぽんと頭を撫でた。

理由 : 土方→←目星 : 銀時



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美雨(プロフ) - 宙さん» あわわ…!なんと嬉しいコメント!ありがとうございます!細かく考えているのに忘れたりと矛盾箇所も出てたりしますが最後まで頑張ります!ありがとうございます!! (2019年9月14日 0時) (レス) id: ad41125a5f (このIDを非表示/違反報告)
- ほんとに、ほんとに、面白いです。色々なことを細かく考えて書いているんだろうなぁって思ってすごく尊敬しています。これからも頑張ってください! (2019年9月13日 22時) (レス) id: 2dea61ff35 (このIDを非表示/違反報告)
美雨(プロフ) - 狗冰さん» わああ!わざわざ、ありがとうございます!文才がないのに苦しみながらも頑張ってます汗 最後まで楽しんでもらえるように頑張ります!ありがとうございます!! (2019年9月4日 20時) (レス) id: c9e3b5a9e5 (このIDを非表示/違反報告)
狗冰(プロフ) - めっさ面白いです!楽しく読んで気がついたらもう4に!?小説を書く文才をわっちにも分けて欲しいでありんす。この作品を最後まで応援しているので、更新頑張ってください! (2019年9月3日 23時) (レス) id: aa5a4ed97b (このIDを非表示/違反報告)
美雨(プロフ) - 光華さん» はわわわ…!コメントをいただけるとほんとに恐縮してしまいます…でも、頑張らないとー!とやる気が上がります!楽しんでいただけるよう、最後まで頑張ります!!ありがとうございます泣 (2019年8月13日 23時) (レス) id: c9e3b5a9e5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:美雨 | 作成日時:2019年8月4日 0時

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