この手を離すな【銀魂】4

情け無く : 土方 ページ27

これ以上は聴きたくねえと
頭が拒否ってんのに、身体が動かなかった。
苦え重さは、指先や足先にまで染み渡って
まるで、毒でも盛られたみてえだ。



沖「理由は分からねぇが、
旦那はAの中で特別ってことだろぃ？」


「あ！…はい！そうなんです！」



特別。

んなことは、分かりきってらぁ。
だが、言葉にされるとどうしてだろうな。
鉛みてぇに重苦しく、頭に残って
頭痛までして来やがる。

結局、俺は何なんだ。何がしたい。
万事屋に、本気になっていいのかと
カマまでかけて
万事屋の背を見つめるAの手を
強引に掴んでみたりして…
ああ、あの時か。
あの時、Aの中で
あいつは総悟や神威とは違う、
特別なんだと判断されたんだ。
それを無理矢理、俺は…



土「…だっせ」



痛む頭を抱え、更に項垂れる。

総悟、神威は友人、
万事屋は特別、

じゃあ、俺は…？



「あれ？土方さん？」


土「っ！？？」



顔を上げると、
俺の目の前にAが立っていた。



「具合でも悪いんですか？」


土「いや…あれ、お前ひとり？」


「え？あ、さっきまで
総悟さんとこっち側に座ってたんです。
買出しの手伝いをして下さって」


土「へ、へぇ。そこに座ってたのか。
今、たった今来たから、気付かなかったわ。
総悟は？」


「荷物は運んでおくから、
団子を買って来てくれって。
いつもの団子屋じゃなくて、
この角を曲がったところの団子をと言われて」



やられた。気づかれてたのか。
俺がここにいることを知った上で、
万事屋の話をしやがった、あのドS。



土「あ、あいつまたサボりやがって…。
お前もあんまり相手しなくていいからな」


「はい、…大丈夫ですか？土方さん」


土「はっ！？何が！？」


「少し、顔色が悪く見えます。
さっきも頭抱えて、」


土「疲れて頭痛がするだけだ。何でもねえよ」


「…そうですか」



Aに見られねぇように、
顔を伏せ、立ち上がる。
動かなかった身体が軋むように感じる。



土「見廻り行くから、Aもさっさと戻れよ。
このところ、浪士に動きがあるからな」


「…分かりました。
土方さんもお気を付けて」


土「ん」



眼も合わせずにAに背中を向ける。
頭を抱えて項垂れる姿なんて、んっとに情け無え。
大股で歩みを進めていると、



「土方さんっ…！」



透き通る声が俺を呼び、



「早く、帰って来てくださいね！」



と、振り返った俺の顔をまた
赤く、情け無くさせやがった。

目星 : 銀時→←全く、その通り : 土方

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