この手を離すな【銀魂】2

奥へ ページ6

平太は俯き気味に
小さな声で話し出した。



平「俺…、親に捨てられて
死にかけていた時に
旦那さまに拾われたんですよ。
11歳とか、そんな頃。
それからずっと、旦那さまの側近を
勤めてるんですが…」



平太は一度、わたしの顔を伺い
いや、と首を振った。



平「この前もお話しして、今も。
やっぱり、Aさんが
資産目当てで四辻さまを選んだとは思えない」


「…え？」


平「あ！…す、少なからず
そう思ってる下人も…います。すみません。
それに、今まで四辻さまに寄って来た方も
皆そうでしたから…」



謝る必要などない。
だって、これ程の方だ。無理もない。



平「…俺、何も知らないんです」


「何も知らない？」


平「10年弱、一番近くに居させてもらってるのに
旦那さまのこと、何も知らない…」


「……」


平「だから、四辻さまが
婚姻したい女性がいる、と
仰った時はほんとに驚いて…
資産目当ての人じゃないか、と
心配と同時に安心もしたんです」


「安心…？」


平「四辻さまに心を許せる人が
出来たんだ、って」



ふっと笑う、平太は
ほんとに幸せそうに笑って見せた。



平「どんな時でも四辻宗介を
完璧に演じてしまう旦那さまが、
唯一、自分で居られる人と出逢えたんだって。
もう、1人じゃないんだなって」


「…平太はほんとに、
四辻さまが大切なのね」


平「ここで働いてる者は
皆、親に捨てられたか
酷い目にあった奴らばかりなんです。
皆、旦那さまを大切に思ってます。
…故にAさんをよく思ってない者も
まだいるやもしれませんが、」


「こういう生き方をして来た以上、
覚悟できているから気にしないで。
わたしが……、わたしなんかが
四辻さまの唯一になれるのかは
分からないけれど
なりたいと、今改めて思ったわ」



不安そうな平太に微笑んで見せると、
平太はほっとしたように肩を下ろし



平「これから俺は、旦那さまも
旦那さまの唯一のAさんも
ちゃんと支えていきますから
頼ってくださいね！」



と力強く、言った。
わたしはその愛らしさに
思わず、ふふっと漏らし
四辻さまの人となりがまた、
分かった気がした。



「もちろん！頼りにしてます！」



あと何日か、
あと数週間か、
外出出来なくとも
苦にはならないこの屋敷で
認めてもらえるように
また頑張っていこうと


さっき、
一度頭に浮かんだことを
奥へ奥へと押し込めて
誓った。

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