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材料と経験 : 土方 ページ36

「でもまあ、少しくらいなら
食べられますから
田舎の方で何か探します」


土「………」



笑って言い退けるA。
手に取るように
言葉の端々に、表情に、態度に、


自分の価値はもうねえ、


と思っていることが分かる。



土「……四辻事件については
まだ終結してねえ。
Aにも、かぶき町を離れられちゃ困る」


「……ああ、そっか。そうですよね…」


土「………それに、
四辻の部下や下人どもが
いつ、お前を狙ってくるか分からない。
Aは引き続き、保護下にいて貰う」


「…え?」



俺は考えるよりも先に、声に出していた。
その大きく見開かれた眼を見つめながら。



土「真選組の女中になれ」



Aは一時停止でもしたように、
眼を見開いたまま、止まってしまった。
それに気付いて、俺も
何を口走ったんだ、と慌てる。



土「あ、なんだ、その、そうすれば
保護下にも置けるし仕事も生活も問題ねぇだろ?
四辻本人についても、獄門に代わりねぇが
依然として証拠が上がらねえ。
この先、どうなるかは未だ分からねぇんだ。
四辻本人も部下どもも、
Aが退院して、世に出たと知れば
必ず、アクションを起こすに違えねえ。
とりあえず、としてもだな、
真選組内で俺たちの眼が
届く場所にいるのが画策だと考えた」


「…………」


土「…きゅ、急過ぎたな。悪ぃ」



先ほどのAのように
早口で捲し立てる俺を、
変わらずに呆然と見つめ続けるAに
何をやってんだ、俺は…と項垂れる。



「……あ、」



か細い声が漏れ、眼だけで見上げると



土「っ!!??」



白い頬を椿のように赤く染め、
大きく見開かれていた眼には
今にも溢れ落ちそうな程の
涙が揺れていた。



「……りがとう、ございます。
そんなに、わたしのことまで……
考えてくださって、、いただなんて。
す、すみません!ぐすっ、
慣れてなくて、驚いてしまって…!!」





自分のことを、他人が考える。
それも、大切に。


そして、そこに
金銭や身体の授受は無く。


きっと、今までも
例えば、日輪からはあった筈だ。


だけれど、そんなことに
気付ける材料と経験が
Aには皆無だった。


商品としての自身の価値以外、
自分の価値を知らないのだろう。





ごめんなさい、と幼子のように
赤い頬のまま、溢れる涙に戸惑い
いや、眼の前に差し出された、
自分の価値に戸惑い
ぽろぽろと溢れる涙を拭うAを
俺は心の奥底から、
変えてやりてぇと思った。

有難いお話 : 銀時→←途端に騒つく : 土方



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にじゅまるる(プロフ) - 美雨さん» いえいえ!!こちらこそ修正してくださってありがとうございました!!(°▽°) (2019年5月1日 9時) (レス) id: dfaa12cf19 (このIDを非表示/違反報告)
美雨(プロフ) - にじゅまるるさん» あわわわ…!何故に三番隊!笑 完全に間違えていました!ご指摘、わざわざ、ありがとうございます!!修正させていただきました! (2019年5月1日 0時) (レス) id: c9e3b5a9e5 (このIDを非表示/違反報告)
にじゅまるる(プロフ) - こんにちわ^^!!少し聞きたいことがあるんですが、三番隊隊長は総悟じゃなくて終兄さんじゃないんですか?もし私の間違いであればごめんなさい…けれど気になったので… (2019年4月30日 15時) (レス) id: dfaa12cf19 (このIDを非表示/違反報告)
美雨(プロフ) - 夏終朝凪さん» 嬉しいお言葉ありがとうございますっっ!!これからもう少し銀魂世界寄りになっていく予定なので、引き続き楽しみにしてもらえたらと思います!コメントありがとうございます涙 (2019年4月16日 23時) (レス) id: c9e3b5a9e5 (このIDを非表示/違反報告)
夏終朝凪(プロフ) - 続きが気になります!とても読みやすいですね!更新楽しみにしてます!(*´▽`*) (2019年4月16日 21時) (レス) id: 06ec7af5b3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:美雨 | 作成日時:2019年3月29日 0時

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