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夫婦 ページ23

四「気味が悪いか?
これでも治せた方なんだ」



四辻さまは、身体に満遍なく蔓延る
傷痕に指を滑らせる。
わたしは口元を押さえながら、
必死に首を振る。



四「Aなら大丈夫だろうと思ったよ。
遊女が脱走したりして捕まって、
痛めつけられた傷痕を見たことがあるだろう?
まあ、わたしは医療を学んで
自身で治せるところは治したけれどね。
触っても分からなかっただろう?」


「え、ええ…」



わたしが押し黙るのを分かっていたように、
その肌に羽織だけを重ね、
ふっと口元を歪めて見せた。



四「聞けばいい。
気にするな、夫婦じゃないか」


「………、、だ、誰に、」


四「親だよ」



その声はいつものように落ち着いていて、
それが余計にわたしを慄かせた。



四「もうあまり憶えていないがな、
躾と称し、自身の無能さを
こどもに八つ当たりして
食事もさせないような奴らだった。
田舎の山頂付近ではあったがね、
村を取り締まっていたあいつらは
俺にどんな奉公もやらせたよ。
お前のようなこともな」


「…っ!?」



四辻さまの口元は歪んだまま、
でもその眼は、あの
深さを、鋭さを増していた。



四「親から捨てられた者。
売られた者。虐げられた者。
お前も含め、この屋敷には
そんな奴らばかりだ」


「…境遇が、お分かりになるから」


四「ん?ああ。違う違う。
そういう奴の方が扱いやすいからだよ。
簡単だろ?隙間がある奴に取り入るのは」


「……え?」



四辻さまは、さも可笑しそうに言いのける。
わたしは何かおかしいことを言っただろうか。



四「信教させるようなものだ。
それさえあれば、後は手懐けなくとも
どうとでもなる。
隙間のある奴というのは
信教するものがないとまた不安に陥る。
私がそれを引き受けているのだよ」



右足に科せられた鎖がずしり、と響く。
わたしは酷く、喉が渇いていくの感じた。



四「ただね、お前は違う。
ずっと手に入れたかったお前は
そもそも、信教心など持ち合わせていなかった。
誰かを信じたり、望んだり
それこそ、お前の境遇がそうさせていた。
だから、私はお前にだけは
愛を見せようと思った。
こうして、傍に居てくれさえすれば
不自由なく、生きられることを保証する。
それなのに…」


「…っ!!?」



深さと鋭さが満ちた眼は
わたしをじろりと睨み付け、
ああ、平太も言っていたっけと
わたしに想わせるには充分だった。



本当の彼を、誰も知らないのだ。

崇拝→←冷たく重い



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にじゅまるる(プロフ) - 美雨さん» いえいえ!!こちらこそ修正してくださってありがとうございました!!(°▽°) (2019年5月1日 9時) (レス) id: dfaa12cf19 (このIDを非表示/違反報告)
美雨(プロフ) - にじゅまるるさん» あわわわ…!何故に三番隊!笑 完全に間違えていました!ご指摘、わざわざ、ありがとうございます!!修正させていただきました! (2019年5月1日 0時) (レス) id: c9e3b5a9e5 (このIDを非表示/違反報告)
にじゅまるる(プロフ) - こんにちわ^^!!少し聞きたいことがあるんですが、三番隊隊長は総悟じゃなくて終兄さんじゃないんですか?もし私の間違いであればごめんなさい…けれど気になったので… (2019年4月30日 15時) (レス) id: dfaa12cf19 (このIDを非表示/違反報告)
美雨(プロフ) - 夏終朝凪さん» 嬉しいお言葉ありがとうございますっっ!!これからもう少し銀魂世界寄りになっていく予定なので、引き続き楽しみにしてもらえたらと思います!コメントありがとうございます涙 (2019年4月16日 23時) (レス) id: c9e3b5a9e5 (このIDを非表示/違反報告)
夏終朝凪(プロフ) - 続きが気になります!とても読みやすいですね!更新楽しみにしてます!(*´▽`*) (2019年4月16日 21時) (レス) id: 06ec7af5b3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:美雨 | 作成日時:2019年3月29日 0時

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