この手を離すな【銀魂】2

確信だ : 土方 ページ18

万事屋の野郎に焚き付けられたからではない。
ましてや、
俺も一目逢いてぇなど想ったわけでもない。

確か、四辻はまた出張に出てる筈だ。
動けるのは今だろうと思っただけ。
少し離れてはいるが
この喫煙所なら、様子を伺える。
数時間、経つが
出入りするのは下人か商人だけで
Aの姿は一向に見えねぇ。
屋敷を覆う塀も高く、
中の様子はもちろん見れねぇし…
商人か何かのフリして
入口から、伺えねぇか。



土「…ん？」



玄関から、長い通路を歩いてくる人影が見えたが
なんだ。動きがおかしい。
だが、着飾ってる訳じゃねえってことは
恐らく、下人だろう。
立ち上がり、自然に門前へと向かう。



土「ああ、ちょっと、すまねえ」


？「はい？」



顔を上げたそいつは、歳は総悟くれぇか。
切り揃えられた前髪がさらっと揺れる。



土「道を聞きてぇんだが、
それにしてもデケぇ屋敷だな。
この辺の地主か何かか？」


？「いえ、あそこにある病院や
あそこの店の物の屋敷です」


土「道理で。お前は下人か？
じじいにこき使われるには
まだ随分と若えじゃねえか」


？「いえ、四辻はまだ若いんです。
えと、道案内って言うのは？」



もう少し、話を膨らませたかったが
怪しまれても面倒だ。
屋敷内も下人が多いな。



土「ああ、すまねえ。
煙草屋は近くにあるか？」


？「それなら、この通りを真っ直ぐに、」



そう言いながら、人の良さそうな下人は
俺に説明しようとわざわざ、道に出る。
その不可思議な動きがまた眼に止まり、
足下に眼を移すと



土「………その足、、切れてんのか？」


？「えっ、あ、ああ、まぁ」


土「まさか、その若え旦那に
やられた訳じゃあるめぇな？はは、」



確信だ。

ハッパをかけて
一瞬。
ほんとに一瞬だったが、
泳いだこいつの眼に
勘をまた呼び起こす。



？「ご冗談を…。
では、お気を付けて」



にこり、と微笑み
ずずっと引き摺られた
右足の腱には、傷が赤黒く。
腑に落ちねぇほどに
そこだけ、綺麗に傷付いていた。



土「…おいっ」


？「……まだ何か？」



そう言いながらも、
引き摺る足を隠すように振り返り
俺に笑顔を向けるこいつは、



土「あっこの病院もやってるっつったな。
ケガもしてんだよ、寄って来てぇから
お前の名前教えてくれよ。
出せや、少しは値切れんだろ？」


平「俺の名前じゃ無理ですよ。
平太です。また何かあったら
呼んでください、旅のお方。では…」



確信だ、万事屋。

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