この手を離すな【銀魂】2

瞼の裏 ページ15

がた…っ



門「では、お休みなさい。
Aさま」


「ちょっと待って！平太は…、」



ぴしゃんっ



「……っ、」



なんてこと。

平太はわたしの為に
連れ出してくれたのに、
あっという間に
連れ戻されてしまった。







『ねえ、聞いて！？
ほんの少し、外に出たかっただけで
きちんと帰るつもりでいたわ！
わたしが平太に頼んで、』


門『旦那さまにも通達が行っています。
すぐにお戻りになられるかと』


平『…！』


『…平太、大丈夫よ。
わたしから四辻さまに話せば
分かってもらえるから、ね？
……平太？』








連れ戻されてる間、
平太はずっと顔色が悪かった。
わたしが思ってるよりずっと、
悪いことをしてしまったのかもしれない。

悪いことをしてしまった際の
後始末がどんなものなのか、
わたしはよく知っている。
平太は…、大丈夫かしら。


でも、四辻さまが
すぐ帰ってくると言っていた。
わたしから話して、平太のことも
分かってもらおう。
四辻さまは平太を可愛がっている。
大した問題にはならない筈だ。



それにしても、




「……久しぶりに逢えた」



驚いた顔が忘れられない。
月明かりに照らされた銀髪が忘れられない。
久しぶりに聴いた声が、忘れられない。

偶然でも何でも逢いたかった。
逢ってきちんと謝りたかった。
約束を果たしたかったこと。



「よかった…、伝えられて」



ひと時の安堵の後に思い出すのは、



「月詠さんが逢いに来てくれてたなんて、
一度も聞いてない…」



どこで途絶えたのか、
それとも意図的に
伝わって来なかったのか。
平太が話してくれた、
わたしのこの部屋や下人のことも…


すべて、四辻さまが？


平太の言う通り、
わたしを大切にして下さっている。
外に出れないことも公表できないことも
理由はきちんと伝えてもらってる。


これ程までに、
贅沢な暮らしをさせてもらって
何故そんなことを考えるのかと
いろんな想いと共に、
奥へ、奥へと押し込めて来た想い。



わたしは、
わたしの人生は、やはり



籠の中の鳥、



でしかないのだろうか。




ベッドに伏せ、考えを巡らせていると
いつの間にか眠ってしまった。



瞼の裏に映る、
揺らめく銀色を見つめながら。

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