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狭い籠 ページ11

平太が持って来てくれた、辞典を眺める。
こんな本があったのね。
遊女には教養も必要で勉強させられたけれど、
すべて現実的な事柄ばかりで
こうやって本の世界に入り込めるような
小説は触れ合ったことがなく、
四辻さまが気に入ったのならと
たくさん買って来てくださる。
読めない漢字は今までもあったけれど
辞典があれば、もう困ることはなさそうだ。



「…狭い籠で生きていたのね」



柔らかく薄い紙をぺらりぺらりと捲る。
自分がどれだけ世間知らずだったのか、痛感する。
四辻さまが博学であるから余計に。

本当に
何故、わたしだったのだろう。

自分にあるものとすれば、
吉原で身に付けた、
男の人を翻弄できるくらいの術。
そしてそれは、わたしでない遊女も
持ち合わせていた。

自分で居られる

そう仰っていたけれど、
わたしと過ごす時間など結局
多くは取れないと承知していただろうに。


小さな明かりに照らされる部屋を見渡す。
わたし、1人には広過ぎる部屋に
無数の本が重なり、散らばっている。
下人が掃除や片付けを毎日してくれるのだけれど
本には触らないでもらえますか、と
お願いしてある。
あの山は、胸の奥を突かれた本。
この山は、今のわたしにはまだ理解し得ない本。
本で得られたと同時に、
本を読むことで探究心が育った。
自身がどれだけ、無知でいて
そしてそれは酷く、
つまらないことなのか分かった。

つまらない人、

それなのに四辻さまは
そんなわたしと居て、本当に楽しいのだろうか。
彼はどうして、そんなわたしと
友達になどなってくれたのか。



「…約束、破っちゃったな」



本を閉じた指にはめられた指輪が
やけに不恰好に見得たのは、
久しぶりにしっかり見た自分の指が
やたらと青白く、細かったからか。
ここまで、似合っていなかった?



とんとん…



「…?はい、どうぞ」



がらら…



「平太?」


平「…まだ起きていたんですね」


「…お風呂には入ったんだけどね。
どうかした?」


平「…」


「平太?」


平「入っても?」


「どうぞ」



平太は渋りながらも部屋に入り、
静かに戸を閉めた。
その顔は何かを悩んでいるようで。



平「…旦那さまは出られました」


「そう」


平「皆、寝静まっています。
今は未明です」


「!…そう」



平太がわたしに時刻を言うなんて、



平「Aさん!…」



驚いていると、平太は真っ直ぐに
わたしを見つめ、こう告げた。



平「しま、せんか。脱走…」

うろ覚え→←蓋 : 平太



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にじゅまるる(プロフ) - 美雨さん» いえいえ!!こちらこそ修正してくださってありがとうございました!!(°▽°) (2019年5月1日 9時) (レス) id: dfaa12cf19 (このIDを非表示/違反報告)
美雨(プロフ) - にじゅまるるさん» あわわわ…!何故に三番隊!笑 完全に間違えていました!ご指摘、わざわざ、ありがとうございます!!修正させていただきました! (2019年5月1日 0時) (レス) id: c9e3b5a9e5 (このIDを非表示/違反報告)
にじゅまるる(プロフ) - こんにちわ^^!!少し聞きたいことがあるんですが、三番隊隊長は総悟じゃなくて終兄さんじゃないんですか?もし私の間違いであればごめんなさい…けれど気になったので… (2019年4月30日 15時) (レス) id: dfaa12cf19 (このIDを非表示/違反報告)
美雨(プロフ) - 夏終朝凪さん» 嬉しいお言葉ありがとうございますっっ!!これからもう少し銀魂世界寄りになっていく予定なので、引き続き楽しみにしてもらえたらと思います!コメントありがとうございます涙 (2019年4月16日 23時) (レス) id: c9e3b5a9e5 (このIDを非表示/違反報告)
夏終朝凪(プロフ) - 続きが気になります!とても読みやすいですね!更新楽しみにしてます!(*´▽`*) (2019年4月16日 21時) (レス) id: 06ec7af5b3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:美雨 | 作成日時:2019年3月29日 0時

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