この手を離すな【銀魂】2

完璧 : 銀時 ページ2

他愛も無いことしか、思い出せない。


ったりめぇだ。


他愛も無い話しか、してねぇもん。



それでもよ、
夜が楽しみだったのは
あの凛とした声で、
名前を呼んでもらえるから。
蕩けそうな笑顔が見れるから。

それが、

他の誰にしてるのと同じでも。




別に、よかったんだ。




…いや、よくねぇな。
よくなかったな。
アホらしい程に
俺だけがいいなぁ、なんて
思っちまってたな。
昨晩はここで誰かに、なんて
巡る思考を必死に脳端に追いやって
結構、必死だったな。


あっという間に消えちまった。
あっという間になくなっちまった。
あっという間過ぎて、涙も出ねえ。


力は、なんか入んねぇけど。
哀しさに暮れてはいねぇ。と思う。




銀「……俺、ばっかり、だったんだな」




未明の自室。
心配する、新八と神楽を追い出して
布団も敷かず畳に数時間、
横になってるもんだから
多分俺の頬には畳の痕がついてんだろうな。


痕。

少しはさ、ほんとに
友達として見てくれ始めたかなって
思ったりなんだりもしてたんだよ。
そうなりたくて、
他の男にするように
同じことをされるのを拒否った訳だし。



銀「あああーー。
それがいけなかったのかなぁ！
なんなら、男として見られてなかった？」



畳におでこをごりごり擦り付け、
行き場の無い苛立ちをぶつける。
金があればよかったのか？
俺がいくつも事業してればよかったか？




結局、




銀「……彼女が決めた生き方か」




今の吉原なら、自分で選べた筈だ。
だが、
こどもの時からそこで生きて来た彼女に、
他の選択肢など、そもそもあったか。
俺がもう少し、見せてあげられたんじゃねぇか。
何をかは、わかんねぇけどさ。
映画館行った時も、カフェ行った時もさ、
邪魔者はいたけどすげえ喜んでたし。
普通の女の子っつうか………。




銀「邪魔者…」




俺はふと思い出し、起き上がる。
あいつ、何であんなに慌てて
俺の後追っかけて来たんだ？
なんで舌打ちして、また慌てて帰った？
あいつが吉原を捜査してたことは間違いねぇし
Aちゃんは何もないって言ってたけど
番号交換してたくれぇだし…、




銀「…四辻、宗介」




口に出せば、名前まで完璧で腹立だしい。
舌打ちをしながら、俺は羽織りを取り家を出た。

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