検索窓
今日:5 hit、昨日:6 hit、合計:149,827 hit

この先の ページ41

「…身請け」



突然のことに、
わたしの脳は追い付かず
何度も呟き、繰り返す。



月「わっちらも主がおらぬ状態で
話を進めたくはなかったんじゃが
四辻さまが…とても真剣で…」


日「勝手に決められないと伝えたわ。
だけど、通常の身請け額の
5倍を出すと言って話を聞かなくて、」


「5倍…っ!?」


月「主が戸惑うのも分かる。
…じゃが、、じゃがな、わっちらも
時間をもらってよく考えたのじゃ。
四辻さま程、身請け先に相応しい人は居はせん」


日「お優しいし、お勤めも立派。
何より、本当にあなたを想っているわ。
四辻さまの家に入れば
変わらず、かぶき町で暮らせるし
もう何も気にすることなく、
好きに出掛けることが出来るのよ。
身請け額がどうのの話ではないの。
あなたのこの先の人生を考えて欲しいのよ」


「…この先の、人生」



そんなもの、
ただの一度だって、
考えたことがあったかしら。

一番古い記憶でさえ、
わたしは知らぬ遊女にあやされ
禿となっていた記憶だ。
ただ、永遠とこの生き様が続いていく。
そんな風にしか考えたことはなかった。
故に、自身のこの先の人生を
考えようなど望みもしなかった。



日「そうよ…」



まるで、わたしの思考を読み取ったような
日輪さんの言葉にはっと、顔を上げる。
日輪さんは太陽のような微笑みで
わたしを見つめていた。



日「選べるのよ。Aさん。
あなたが選ぶことが出来る。
それが、あなたの人生なのよ」


「わたしの…?……人生」



今になって、
晴ちゃんが言っていたことを
理解するだなんて。

わたしのことを、
こんなに真剣に
考えて下さっていた人が
いただなんて。



月「四辻さまでなかったら、
Aに話す前にわっちらが断っていた。
警察の四辻さまへの嫌疑も
落ち着いたようじゃ。
良きタイミングなのではと、わっちは思う」



月詠さんが、今までに見たこともない程
優しく微笑んで見せる。
それが、ほんとに胸を締め付けるのだ。



ふたりの想いを知って、
もちろん、ここ吉原のことを考えても
わたし自身のことを考えてみても






それから、






遊女と客という、
利用し合う立場ではなく
ひとりの人として


友達に逢えるようになると
考えてみても






「…!」

微かに→←でも、だけど、



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (36 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
112人がお気に入り
設定タグ:銀魂 , 坂田銀時 , 土方十四郎
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:美雨 | 作成日時:2019年2月27日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。