不器用 ページ4
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「大丈夫やった？」
「一応。ショッピ、心配してくれてありがとね」
長い廊下を歩いていると、ショッピが駆け寄ってきて声をかけてくれた。ゾムさんに何もされなかったか、との事。
心配してくれるなんて優しいなぁ。こんな私と昔からずっと一緒にいてくれること自体、優しいのだけれど。
ショッピはよく私のことを心配をする。心配性すぎるが、心配されて嫌な気はしないし寧ろ心が暖かくなる。
彼の顔を見れば黒い汚れがついていた。聞けばバイクの手入れをしていたらしい。自分の服の袖で頬の汚れを取ってあげる。
背高いから、背伸びしないと届かない。
「あ、なんか付いとった？」
「うん。…お手入れって大変？」
「結構大変やけど、好きやから大事にしたい」
「すごいね」
「寧ろそれより、セレナのこと大切にしとる。バイク以上に好きやし」
「へ、」
こうやってショッピは、時々甘い言葉を吐く。その言葉に頭がクラクラしそうだ。
面と向かって愛されることなんて殆どないからいつも照れてしまうし、どう対応すればいいのか混乱する。
私が混乱するとショッピは意地悪く笑う時もあるし、目を細めて愛おしそうに笑う時もあるから、これもずるい。
ショッピが私の髪に手を伸ばしかけた時、
「あれ、セレナと、ショッピくん」
名前を呼ばれた衝動で声のする方を向くと、煽るのが上手な、ニット帽をかぶってスコップを持った──シャオロンさんがそこに立っていた。
目が合った途端、彼が手に持っていたスコップと書類らしきものが床に音を立てて落ちた。私もショッピもその音に驚いて肩を揺らす。
大切にされている傷一つないスコップと大量の書類を落としてしまった当の本人は、それらに目を向けず、苦笑いを浮かべるだけだった。
「もしかして2人、付き合っとるん…？」
「そう思った理由はなんすか？」
「え、やって、そーゆー雰囲気やったし…」
「へぇ」
口角を引き攣らせつつ眉を下げながらショッピに聞くシャオロンさんと、そんな彼に冷めた目を向けるショッピ。このまま見ているとどっちが先輩なのか、わからないような。
何となく居心地が悪くなってぎゅっと服を握っていると、再びシャオロンさんに名前を呼ばれた。「……セレナ、教えてや」と。
今日はやけに呼ばれるなぁ。セレナ、なんて滅多に呼ばれないのに。
「えと、付き合って、ないです」
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作者名：かえち
| 作成日時：2019年11月3日 18時
