Trick and Treat.【USSS】 (ページ29)

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夕飯ページ29

Side:A

「あの、センラさん」

「ん？どしたん、ニンゲン」

今日の夕飯当番はセンラさん。私は特にやることもないので、それを手伝っていた。

台所にはたくさんの食材が並んでいる。

が、私が触っていいのは手渡された食材のみ。
主体的に動くことはできない。

「はい」と、手渡された野菜を包丁で切る。
危なっかしいな、と横からたまに言われるが、まぁ聞かなかったことにしよう。

ふと、横を見る。
袖をまくっている最中で、長い爪が見えた。

「あ、ニンゲン、もうちょっと離れてくれへん？危ないわ」

「えっ、あ、はい……。包丁の話です？」

「いや、今から捌くんよ、花を」

「……花を？」

「うん、これ食べる花やねん」

指差した先には鮮やかな赤のきれいな花。
オシャレなお店には食べられる花とか、そういうのが添えられてるし、そういうことだろう。

普通の夕飯にもおしゃれを忘れない精神。流石だな(？)

……するといきなり、センラさんは包丁を逆手に持った。
サスペンス映画なんかでよく人を殺すときに見るような目つきで花を見ている。

そして、一気に花の萼(がく)を掴み、茎と分断した。
小さく、高い声のようなものが聞こえたような気がした。

「ふぅ、もう近づいてもええで」

「は、はぁ」

ちら、とセンラさんの手元を見る。
まな板には、草色の汁が飛び散っていた。

センラさんはそれを水で軽く流し、また野菜やらを切り始めた。

「……そういえば、なんで“離れて”って言ったんですか？」

「え？あぁ、花のことやんな？噛むからやで。
あれ、人喰い花なんよ。まぁ俺ら人ちゃうけど」

「えっ」

「俺、食べる花言うたやんけ」

「食べる花ってそういう……？」

「うん。他の食材もそういう危ないのあるし、気ぃつけてな」

「押忍……、ていうことは他の食材も？」

「そやで。さっき切ってもらった肉も、本当なら人間が食ったら病気なって死ぬやつやし。
クールー病って名前やったっけ？」

「待ってそれ本当に大丈夫なやつですか」