Trick and Treat.【USSS】 (ページ28)

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盤上遊戯ページ28

Side:A

「……あっ、志麻さん！いまお暇ですか？」

「うぉっ、びっくりした……どしたん？」

「いえ、暇だったもので、付き合ってほしくて」

「ええけど何するん？」

実はさっき、坂田さんからチェスをもらったのだ。どうやらお詫びの印らしくありがたいのだが、2人用だからな、チェス。

そこで暇そうな人に声をかけたってわけだ。
最初はセンラさんを誘ったのだが、忙しいようで、断られてしまった。

「ふぅん、チェスか。じゃあ、俺後攻でええで」

「了解です、じゃあ白もらいますね」

チェスは、先攻の方が有利。
駒を先に動かせることで、より早く空間を支配できるからだ。

先攻になった時点で既に、勝率は6割、というのをどこかで聞いたことがある気がする。

この勝負、もらった！

✳

「……あれぇ？」

「ほら、はよ動かせや。お前の番やで？」

ニヤニヤとこちらを見る志麻さん。

やばい。勝ち筋が見えない。
このポーンを動かせば、あっちのルークが動いてくるだろうし、キングを動かせば取られてしまうだろう。

……。やばい、手のひらで転がされている気がする。
どうしよう。ここで勝つには、どうすればいい？

……そうだ。

「……ん？なんでクイーン動かしたん？あと3手で負けるで？それ」

「あっ」

「はは、待ったは無しやで」

コン、と志麻さんのビショップが動かされた。
しかし、ここまでも作戦のうち。
正直、ここでビショップが動かされるかは賭けだったけど、良かった。

「ふふ、かかりましたね」

「何ィ?!」

「チェックメイトです、志麻さん！」

「?!」

コン、とクイーンをキングの前に置く。

このキングは、次にどこに置かれても、私が取ることができる。

ニヤリと笑うと、志麻さんは「やられた……！」と悔しそうにしていた。

「……クソ、……参りました」

「やったぁ！くくく、どうやら志麻さんの目は節穴だったようで！ふはは！」

「クッソ！悔しい！なんでだあ！」

「ふふ、私家族の中で負けなしだったんですよ」

ふん、と鼻を鳴らす。
愉悦。
いつも偉そうにしてる人を見下すのはとてもいい気分だ！ふはは！！

「お、まーしぃ何してんの？」

「うぅ、うらたさん！ニンゲンが虐めてくるぅ！」

「お兄ちゃんに任せなさい！
おらニンゲン、勝負しようぜ」

「おっ、望むところです！」

✳

「はい、チェックメイト。」

「くっ……なんでだ……」

「くく、出直してこい」