Trick and Treat.【USSS】 (ページ25)

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助け舟ページ25

Side:A

「よっと……。大丈夫？」

こくりと頷く。

いや大丈夫なわけない。
あの高さから飛び降りるとか正気の沙汰じゃない。

まだ心臓はバクバクだし、普通に死ぬかと思った。

「くく、ほな行こか。うちの船長もなかなかええ人やで」

そうして抱きかかえられたまま、男の人は歩き始めた。……降ろしてくれない。

軽く身じろぎしてみるが、それをものともしない様子。多分抵抗しても無駄だな。

そう思っておとなしく運ばれることにした。

しばらくすると、大きな船が見えてきた。
うらたさんの船とだいたい同じくらいの大きさだろうか。

「着いた」と言うと、私を降ろした。
ここからは自分で、という意味だろう。

どうぞ、と言うように船に誘導される。

そうして、船と陸をつなぐ橋に一歩踏み出したとき。

ふわりと、背後から甘い香りがした。

細身の男もそれに気づいたようで、振り向き、服の中からナイフを取り出した。

「……誰や？」

そう男が呟いた。

思い切り周囲を警戒する男。
そりゃ逃げるんだから警戒しているんだろうけど、なんだろう。
何かがおかしい。

そう思い、踏み出した足を引っ込める。

そしてもとの方向へ一歩後退る。

すると、「逃さへんで」と男に強く手を引かれた。

やっぱり、おかしい

“逃げなきゃ”と頭が警報を鳴らす。
しかし、男の力はあまりにも強く、振り解こうにも振り解けない。

離して、と涙目になりながら、訴える。
しかし、離してくれない。

「……くく、騙してごめんな？俺人間ちゃうねん」

するとまた、ふわりと甘い香りがした。
目の前の男の視線が、明らかに私の背後に行った。

「……誰やねん、お前」

「……その子、やめた方がいいと思うなぁ」

目の前の男とは違う、低めの声が背後から聞こえた。

「いきなりなんやねんお前。何者か知らんけど、そんな女みたいな格好して」

「うらたさん達を敵に回すのはあまり得策じゃないと思うけど。俺は。」

カツカツというヒールの音と共に、また甘い香りがした。

背後から、私の顎をするりと撫でられる。

「じゃ、この子は俺が貰ってくね」

「は？勝手に来て貰ってくとか頭おかしいやろ」

「元からそういうルール。じゃあね」

ぱちんと、背後の人が指を鳴らす。
気付くと私はパーティ会場に戻っていた。

振り向くと、桃色のふわふわとした髪の女の人。

可愛くて、とても綺麗。

「どーも、お気に入りちゃん」