Trick and Treat.【USSS】 (ページ23)

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Side:A

すごい……と感動していた、その時、隣から「おぉ！久しぶりやなぁ、元気しとった？」という坂田さんの大きな声。

びっくりしてそちらを向くと、坂田さんの向かいに、知らない、ふわふわと浮いた白い人。

坂田さんは人間になっているのに、この人はいかにもなオバケだ。なんでだろう。

「……あぁ、そや。こっちはお嬢。俺らの食料やで」

「あはは、ってことは人間？」

人間、というところだけ、小声でそう言った。
人間が食料っていうのは共通認識なのか。

「そやで。あ、俺らのやから、食ったらあかんで？」

「もちろんだよ！うらたさんに怒られるのはボクだし、敵に回したくないもん」

あはは、と笑う。それでいいのか？

「……あぁ、ごめんごめん。……えっと、お嬢さん？だっけ。ボクはまふまふです。よろしくね」

「ま、お嬢ってのはさっき付けたんやけど」

「へぇ、本当の名前、あるんだ。なに？」

「ニンゲン……。……あれ、ニンゲンちゃうか。なんやろ。なぁ、名前、あるん？」

そう聞かれ、こく、と軽く頷く。

「ほーん、じゃあ名前、ちょっと耳元で教えてくれへん？」

そう坂田さんが言った瞬間、口が開いた。

しかし依然声は出ない。試しに名前の一文字めを声に出して見ると、すっと音が出た。

名前以外言えないのか、なるほど。

とりあえず、と思って坂田さんの耳元に、手を添えて、「A」と言った。

すると、私は再び喋れなくなった。ずるい。

「へぇ、A……。ちゃんと名前あったんやな、びっくり。」

「えっ、さかたん名前知らなかったの?!せっかくあるんだから、それで呼んであげればいいのに」

体はともかく脳みそは美味しくなるよ、と付け足して。
……やっぱ物騒だな。

そして、そこから坂田さんとまふまふさんが軽く話したあと、二人は別れた。

「……あー、やっぱ面倒くさいなぁ。ごめんA、……やなくて、お嬢、やな。
名前言ったらあかんかったわ。とりあえずちょっと離れてくれへん？
ここからは自由行動。じゃ、解散。」

……。……えーっ………。

言葉も話せないのにどうしろと………？