Trick and Treat.【USSS】 (ページ16)

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馬鹿だページ16

Side:A

“助けて”

そう心の中で言う。
頬を伝った涙が、空気で冷えて冷たい。

坂田さんに噛まれた二の腕は、肉が見えて血が垂れている。

風が当たるだけでも痛い。
死ぬ。普通に死ぬ。死ぬ。

そうして二の腕だけでも痛みの限界を感じていたが、次に発された坂田さんの言葉は、

「あっま、……もう少し食べてもいいかな、怒られへんかな、」

それは、また別の場所を食べる、という意味だろうか。

坂田さんはどこにしよう、と舌なめずりをして、悩んでいた。

私はこんなにも余裕がないのに、坂田さんは随分と余裕だ。

「そーや、太ももとかどうやろ。肉も多いし、柔らかいし!
ほんまは肝臓(レバー)とかも好きなんやけどなぁ……。流石にそれは怒られそうやから、我慢我慢」

……肝臓、肝臓って、中身、だからそれって、

どうにか体を動かそうとする。必死だ。
それに何かを考えていないと、痛みで気絶しそう。

「じゃ、こっちも！いただきまぁす」

声はまるで無邪気なのに、やってることは狂気そのもの。正直頭がおかしい。

あ、と口を大きく開ける坂田さんが見えた。
そしてその歯が軽く太ももに当てられた、そのとき。

「……お前、何してんだ？」

ガチャリと扉が開いた。

「…………あ。あ、うらたさん、いや、違うくて、いや、なんていうか、その、」

「……その？」

「……魔が差した、というか……。」

「……ったく、お前……。とりあえず海に放り出されたくなかったらニンゲンの魔法を解け。あと傷治すか痛み止めとけ」

「は、はいぃ！仰せのとおりに！」

ぱっとこちらに手のひらを向けると、だんだんと痛みが和らいでくのを感じた。

……死ぬかと思った。

傷の方を見ると、肉の部分が少し回復していて、膜が張っていた。

「ったく……。おいニンゲン、坂田が迷惑かけたな、ごめん。傷は一応自己治癒力の3倍くらいのスピードで治ってるはずだけど、どう？」

「膜張ってきました、」

「ふぅん…、遅いな、さすがに。
とりあえず坂田には説教しとくから。許してあげてくれない？」

「それは、もちろん、ですけど」

「ほんと？ありがと。じゃ、また明日にでも傷見に来るわ。」

「あ、は、はい……」

“いくぞ”とうらたさんが坂田さんの足を蹴りながら、部屋から出ていった。

……し、死ぬかと思った、

部屋から出るなって、こういうことか。
……とりあえず、指示には従っておこう、かな。

まだ死にたくないし…