滅ぶ世界で天真爛漫な人間は吸血鬼に従う3

感傷 ページ9

フェリドが人間達に

色々と説明をしている。

最初から信頼されるなど

期待していないが、優一郎だけは何故か友好的な

視線をこちらに向けていた。

(頭のネジが外れてるどころか元からの馬鹿なのか)

呆れたと言わんばかりにため息が出て、けれど、

どこか優しさを宿した目で人間達を眺める。

(あぁ…桜明だからこそ、いや、人間は誰しもが

人の輝きに見惚れるものなんだな…。)

フェリドがヘラヘラしながらこちらに戻ってくる。

「ねーねー、そこ変わってよ〜。」

「走ってればいいんじゃないですか？」

「あ、それいいアイディア。」

「クローリー君も酷くない？」

Aはフェリドが変な視線を投げるとうじ虫でも

見るかのような死んだ目でフェリドを見てから

車の上に乗った。

空を見上げると太陽が登っている。

吸血鬼化で視力が上がっても、太陽を見ると

眩しいし、目が悪くなる気がする。

(ルク様、ウルド様今頃何してるのかな〜？)

何となく2人の顔を思い浮かべてどちらが顔面偏差値

高いか考えてみたら、二人とも違った方向の美形

なので決着がつかない。

2人の元を離れたことに後悔はない。

少しでも人間らしくいられた場所でもあったかも

しれないウルドとルクの会話。

自分を家畜とみなしていても、それで幸せだった。

すぅと空気を目一杯吸ってから吐いて、目の前の敵

を見定める。

どこまでも救いようのない、蛇を片付ける。

眼前に立っているのは人間が気づきあげた砦

「さてと、やりますか。」

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