◇全てはここから始まった ページ2
「おはようございまーす」
今日はろふまおの収録。
何をさせられるんだろう、と毎度の如く考えながら入室するスタジオはなんだか悩ましい雰囲気を漂わせていた。
「どうかしたんですか？」
普通に気になって聞いてみると、Dと複数のスタッフがこちらを向く。
「ああ、加賀美さんおはようございます」
「実はさっき、Dが指輪を発見したんですよ」
「指輪？」
スタッフの一人が手のひらに置いたシルバーリングを見せてくれる。
キラキラしたあまり汚れのないシルバーリングだ。
「綺麗な模様のシルバーリングで、内側には名前が彫られてたので誰かの結婚指輪かな、と思ったんですが…」
「皆さん違うらしいので、誰のだろう、と予想していたんです」
確かにそのシルバーリングは、小さな石が一つ埋め込まれた綺麗なものだった。
そう、まるで私が毎日つけてる(本社では外してる)Aとお揃いの結婚指輪のような…
「…………ん？」
「？加賀美さんどうしました？」
「………その、指輪の内側に彫られてた名前って…？」
もしかして、だけど…
「えーと…… "A" 、らしいです」
額から冷や汗が流れるのがわかる。
昨日、小道具を借りるためにこの部屋に入ったんだっけ。
その時に落としたのか…
「………あの…D…」
「はい？」
「その指輪…」「おはようございます〜」
Dに伝えようとした瞬間に耳に入ってきた声にびくり、と身体が揺れる。
入ってきたのは不破さんだった。
「ん？…あれ、指輪？Dのっすか？」
「いや、持ち主を探してるんですよ、不破さん知りませんか？」
まずい、という感情が脳を覆う。
Dやスタッフさん達ならともかく、不破さん達にバレるのは本当にまずい。
どうしよう、と焦りが滲んだときだった。
「おはよーございますー」
「おはようございます」
「剣持さん、甲斐田さん、おはようございます」
終わった。
詰んだ。
指輪は手放したくないのに…
もう、正直に言うしかないのか…？
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作者名：傘瑠羽 | 作成日時：2024年3月1日 18時
