◆40 ページ40
.
今日は、いよいよ通し稽古。
もうこの段階で、
台詞や歌詞が出てこないような事はないけど
さすがに緊張してるのが、自分でもわかる。
ここ来る前に雑誌の撮影やったけど、
メンバーからもツッコまれたくらい。
稽古場に入れば
いつも通り和気あいあいとしてるけど、
どこかピリッとした空気もあって
稽古場中に響く発声や台詞を確認する声すらも、
じわじわと周りを囲われるように
圧倒されてまう。
……いやいや、ここでビビってたら話ならんて。
ふっと息を吐いたら、
遠くの方で女性キャストと談笑してる
Aちゃんが目に入った。
その笑顔に、上ずってた気持ちが少しだけ落ち着く。
いつだってそうや。
稽古が始まった当初から、
Aちゃんの顔を見ると安心できた。
出来へん事ばっかりで、怒られてばっかで、
マジで稽古が憂鬱やった時もなかったわけじゃない
特に最初の頃は。
それでも、頑張ろうと思えたのは
稽古場に行くのが楽しみやと思えたのは
Aちゃんがおるから
Aちゃんが、相手役やから。
……そうや、俺は一人じゃない。
Aちゃんが隣におるんやから。
「廉くん、おはよう」
準備をしとったら、ふと声が聞こえて。
鈴を転がすように綺麗な声は、
何度聞いても胸の中がクリアになる。
『おはよ』
「緊張するね」
『え、Aちゃん全然してへんやろ？』
「そんな事ないよ、緊張するよ〜」
俺も飄々としてるってよう言われるけど。
Aちゃんも、あんま顔に出えへん方なんかな。
.
楽譜を確認しとるその横顔に
ふと脳裏に蘇るのは、夜景を一緒に見た時のこと。
こんなとこ連れてったら逆に引かれるかなとか、
ちょっと心配やったけど
目をキラキラさせて、喜んでくれた。
俺も息抜きしたかったし、
ただ気分転換になればええな、って
連れてったのは、そういう気持ちからやったのに
喋って、一緒に歌って
そして……
………。
思わず、自分の額を手で擦る。
あんなん、マジで普通にチャラい奴でしかないやん。
キスせんと落ち着かんわ、なんて
またアホみたいな言い訳をした俺を
Aちゃんはどう思ったやろ……。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1346人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆうみ(プロフ) - ぽんさん» コメントありがとうございます(T-T)そう言って頂けて嬉しいです！今後のお話も楽しみにして頂けると嬉しいです(^-^) (2021年5月28日 22時) (
レス) id: f4acf235ea (このIDを非表示/違反報告)
ぽん(プロフ) - ゆうみさんのお話は初めて読んだのですが、すごく素敵で、いつも更新されるたびにこれからの展開がとても楽しみになっています。これからの展開もとても楽しみです！頑張ってください!! (2021年5月27日 6時) (レス) id: e177d1fc6d (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみ(プロフ) - あきこさん» あきこさん、コメントありがとうございます！とっても嬉しいです。そうやって言って頂くことが何より励みになります。 (2021年5月27日 0時) (レス) id: f4acf235ea (このIDを非表示/違反報告)
あきこ - 久々に妄想の世界に浸っています。やはりゆうみさんの文章好きです！次の展開も楽しみにしています。頑張ってください！ (2021年5月26日 17時) (レス) id: a6652d343c (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみ(プロフ) - そらさん» コメント下さいましてありがとうございます。とっても嬉しいです｡ﾟ(ﾟ´ω`ﾟ)ﾟ｡頑張りますね！ (2021年5月23日 21時) (レス) id: f4acf235ea (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆうみ
| 作成日時：2021年4月15日 23時
