64 ページ19
.
心臓の音が、聞こえる。
きゅっと掴んだ腕から、
紫耀の心臓の音さえ聞こえてくる錯覚に陥る。
触れ合う唇から伝わる温もりが
嘘みたいなこの瞬間が現実なんやと教えてくれていた。
こんな風に、紫耀とキスするなんて。
初めてのはずやのに、
ずっと前からこの感覚を知っていたような気さえして。
そっと唇が離れれば
紫耀の目に、俺自身が映ってるのが見える。
『……ｯ、れん…………』
俺の名を呼んでくれるハスキーな声。
こんな余裕のない、
切羽詰まったような紫耀の声を聞くのは初めてで
心がギュッと締め付けられる。
自覚した想いが、溢れて止まらない。
こんなに、胸がいっぱいになるような恋を経験するなんて。
ぎゅっ、と抱きしめられた。
俺の何倍もがっしりした腕が
華奢な俺の体を包む。
その手が、俺の髪をぐしゃりと撫でて
ずっとずっと触れてほしかった温もりが
今までで一番近い距離にあること
隠す必要のなくなった想いが、
がんがんと強く伝わってきて
どうか、その想いをこぼしたくなくて
ふたりで、抱きしめ合った。
ずっと、こうしたかった。
こうしてほしかった。
俺を抱きしめて離さない紫耀。
その背中をトントンと優しく叩いても
少し身じろいでみても離してくれんくて。
「しょぉ、？」
『………』
「そろそろ、苦しいわ」
『………やだ』
「は、？」
『離したら……夢になりそうで怖い』
……なんやねん、それ。
可愛すぎるやろ。
思わず、離しかけた体をもう一度密着させて
紫耀の肩口に頭を埋めた。
いつもの、紫耀の匂いがする。
初めて触れて、触れられて。
苦しいほどに実感する。
大好きで、大好きで、
愛おしくて仕方ない。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1764人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あい(プロフ) - 完結おめでとうございます！素敵なお話でした、(T . T)もう始終涙が止まらず、とんでもない顔でお話を読んでいました笑 久しぶりにこんな甘いお話に触れられて、幸せ者です！これからも、応援しております♪ (2022年4月29日 13時) (
レス) @page29 id: 74fb46b4d8 (このIDを非表示/違反報告)
あきこ - お久しぶりです。切ない気持ちがすごく伝わってきて良かったです！2人の表情まで想像できてキュンとしました！！紫耀くんの心の広さ、見習わなくては（笑）楽しませていただきありがとうございます。 (2021年5月16日 9時) (レス) id: a6652d343c (このIDを非表示/違反報告)
こでまり(プロフ) - 本当に素敵な作品ですね。不器用な2人がお互いを思い遣るが故のもどかしさ、メンバーの愛に涙が止まらない作品です。素敵なお話ありがとうございました。 (2021年4月20日 12時) (レス) id: 47561d5dfc (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみ(プロフ) - ななみさん» コメント頂きましてありがとうございます(^^)私もじぐいわ大好きです。最後に少ーし匂わせたつもりでした笑。妄想はいくらでも出来ますがリアルのじぐいわには敵いません！こちらこそ、お読み頂きありがとうございました。新作でもお待ちしております(^^) (2021年4月16日 0時) (レス) id: f4acf235ea (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみ(プロフ) - 由夏さん» コメントありがとうございます。返信が遅くなり申し訳ありません。しょうれんはやっぱり一緒にいるのがしっくり来ますね(^^) (2021年4月16日 0時) (レス) id: f4acf235ea (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆうみ
| 作成日時：2021年1月11日 0時
