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俺は、臆病やった。
寂しくて、さみしくて、
紫耀の温もりが欲しかったのに
それをあいつにぶつけられへんかったのは
自分でも言葉に出来ない感情を、
明確にするのが怖かったから。
言えば、紫耀が俺から
もっと離れていく気がして。
思春期って言葉を言い訳にして
俺は紫耀の気持ちからも、
自分の気持ちからも、目を逸らした。
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『………………は、?』
「よっ」
『………いや、何でいんの?』
「親がこっち転勤なってん。大阪残ろうか迷ったけど、紫耀もおるし、東京行ってもええかなーって」
『………』
「びっくりした?」
『……そっか。まぁわかんない事あったら聞いてよ』
「しょ……」
すっと離れていく横顔が強張っていたのは、
きっと見間違いじゃなかった。
ズキン、と音を立てて心が痛んだ。
どこかでずっと、気付いてたから。
俺を見つめる紫耀の眼差しが、
時々、"愛しい"って感情で溢れてること。
どうしようもなく切ない目で、俺を見つめてる時があること。
俺のことを、誰よりも大切に、
特別に、想ってくれていること……
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…………それだけ、じゃない。
紫耀が東京に行って、死ぬほど寂しかった。
俺も東京に行くことが決まって、
泣きそうなくらい嬉しかった。
変わってへんはずやのにかっこ良くなった紫耀に、
ドキドキした。
ずっと、会いたかった。
びっくりした!って目を丸くして、
困ったように笑う顔が見たかった。
頭を撫でてほしかった、
抱きしめてほしかった、………
思春期なんて言い訳は
もう通用せえへんことくらい
俺やってわかってた。
───ほんまは、ずっとわかってた。
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遠ざかる紫耀の背中に縋りたい気持ちを
必死になって抑えたのは
歯止めがきかんくなるのが、怖かった。
この気持ちが、
友情や憧れとは違うんやと気付くことが、怖かった。
大切で大好きで、
ずっと一緒におりたかったから。
だから、俺は。
"廉、お疲れ"
そう言って、また俺に触れてくれるようになった
紫耀の優しさと強さに甘えた。
気持ちの蓋を、かたく閉じた。
腐れ縁、戦友、
メンバー、
そんな都合のええ言葉を使って、
近付かれへんのに、離れられへん関係を作り上げていった。
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あい(プロフ) - 完結おめでとうございます!素敵なお話でした、(T . T)もう始終涙が止まらず、とんでもない顔でお話を読んでいました笑 久しぶりにこんな甘いお話に触れられて、幸せ者です!これからも、応援しております♪ (2022年4月29日 13時) (レス) @page29 id: 74fb46b4d8 (このIDを非表示/違反報告)
あきこ - お久しぶりです。切ない気持ちがすごく伝わってきて良かったです!2人の表情まで想像できてキュンとしました!!紫耀くんの心の広さ、見習わなくては(笑)楽しませていただきありがとうございます。 (2021年5月16日 9時) (レス) id: a6652d343c (このIDを非表示/違反報告)
こでまり(プロフ) - 本当に素敵な作品ですね。不器用な2人がお互いを思い遣るが故のもどかしさ、メンバーの愛に涙が止まらない作品です。素敵なお話ありがとうございました。 (2021年4月20日 12時) (レス) id: 47561d5dfc (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみ(プロフ) - ななみさん» コメント頂きましてありがとうございます(^^)私もじぐいわ大好きです。最後に少ーし匂わせたつもりでした笑。妄想はいくらでも出来ますがリアルのじぐいわには敵いません!こちらこそ、お読み頂きありがとうございました。新作でもお待ちしております(^^) (2021年4月16日 0時) (レス) id: f4acf235ea (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみ(プロフ) - 由夏さん» コメントありがとうございます。返信が遅くなり申し訳ありません。しょうれんはやっぱり一緒にいるのがしっくり来ますね(^^) (2021年4月16日 0時) (レス) id: f4acf235ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆうみ | 作成日時:2021年1月11日 0時