たったひとつ〈深紅〉 ３

〈 Sho 〉 ページ5

.







神「───うわっ、岸くんヤバイヤバイ！笑」


高「ここ！俺タイミング間違えちゃったの！」


永「もーちょっと立ち位置広がった方がええよね？」


岸「ここ最高だったね、まじで」









映像が流れる間、途切れない声

メンバーみんな、すごく良い顔してる。




反省点もいっぱいあるし

まだ、明日もあるけど





今は無事に初日を終えた安堵と、

ドームでライブしたんだって興奮の方が大きい。








客席のペンライト見てるだけでも感動だったし

音の反響も、移動する距離も



全てが想像以上で、




だけど、本当に本当に楽しくて。


　





メディアや周りの大人は

ドームまで早かったね、さすがだねって言ってくれたけど



俺ら的には、やっと辿り着いたって気持ちがあったから









映像が終わると、誰からともなくハイタッチして





大まかな反省点を出し合って

細かいところは、明日のリハで再確認ってなって



そのまま雑談が始まりそうなのを遮ったのは








.









「───ちょっと全員、いいか？」









事務所の、いわゆる"偉いさん"







映像見てる時も

ずっと楽屋の隅から観察するみたいにこっちを見てて




正直なんなんだろうって思ってたんだけど


うん、結局何なんだろう？笑











高「なんですかー？」









楽屋を包む和やかな空気は

次の瞬間、一瞬で崩れることになる









.









.











「…………これが、来週出るから」











テーブルに置かれたのは









.












……………………俺の、写真、









…………、









.











10枚近いそれは



その手の雑誌でよく見るモノクロじゃなくて

誌面になる前の、鮮明なカラー写真だからなのか


すごくリアルで








頭が真っ白になるって、

こういうのを言うんだろな……





まるで、今起こってることが

自分に全く関係ない第三者みたいに



頭に浮かぶのは、そんな言葉で









誰も、声を発さなかった






岸くんは、ペットボトルを口元に置いたまま固まってるし

ぽかんと口を開けた廉、海人





唯一、ジンだけは

冷静に、写真を1枚引き寄せて眺めた後





溜め息をついて、テーブルに戻した

.

・→←＊87

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す